5月29日、中国政府が香港での国家安全法に対して米国が中国に制裁検討とのことで、トランプ大統領が記者会見で「香港の優遇措置を停止する」こと、「WHOから脱退する」こと、そして「中国人留学生の受け入れ拒否」の3点について表明しました。
- 香港の優遇措置を停止する
- WHOから脱退する
- 中国人留学生の受け入れ拒否
「香港の優遇措置が停止する」となると、政治リスクから今後は香港からの資金流出が加速し、香港ドルは弱くなると思われます。
大統領は具体的には何を、いつ行うかを指定していませんが、関税からビザ、空の旅、船積み、投資に影響する規則まで多くの側面をカバーするものと考えられています。
トランプ政権が香港金融管理局(HKMA、中央銀行に相当)の米ドルへのアクセスを制限した場合、それは香港ドルとドルのペッグを守れなくなる可能性も出てきます。
その場合はおそらく香港からお金を引き出すように促すことになります。
資本の流れが厳しく制御されている中国本土とは異なり、香港ではお金が無制限に流出することになります。
さて、具体策が米国からまだ出されていない現在ではまだ香港ドルは強くなっています。
1ドルは7.75-7.85香港ドルというペッグ(連動)が取られていて、現在は下限である1ドル=7.75ドルの下限を破るほどの勢いが続いています。
1983年以来、香港ドルは米ドルに固定されています。
いわゆるドルペッグ制をとっているのですが、香港当局としては、自国通貨防衛のために不断の介入が必要なだけに資金力のある国、地域でないとこれを続けることはできません。
1ドルを7.75-7.85としたのは、2005年ですが、過去15年間一度も破られることなくこのバンドは守り続けられています。
ドルペッグを保持することの重要さはなんなのでしょうか?何よりもまず、通貨がペッグされているということは、金融の安定と経済のアンカー(要)と考えられています。
通貨が比較的安全で簡単に交換できるため、投資家は香港にお金を置いておけます。
これこそ香港が最初にグローバルな金融センターになった理由の1つです。
ペッグを壊すと、その金融センターとしての魅力はなくなってしまいます。
香港ドルの米ドルとのペッグ制は、いわゆるカレンシーボード制(Currency Board)という方式です。
国内に流通する自国通貨に見合っただけのドルを中央銀行が保有するという制度で、その結果、自国通貨は100%、中央銀行の保有するドルにバックアップされるため、為替レートを固定するという政策に信認がもたらされる。
中央銀行は自国通貨の流通量に見合ったドルの保有を義務づけられる為、無秩序に通貨増発が出来なくなるということなので、香港のように十分なドルをもっている国・地域であればカレンシーボード制を取り続けることができます。
そんな香港ですが、昔からマクロ系ヘッジファンドは絶対利益の追求のために香港ドルのペッグはずしを狙ってきました。
2011年のことです。
当時は米経済が低迷していましたが、香港経済は絶好調の時がありました。
で、本来ならば、香港ドルが米ドル対比で買われていいはずなのに、香港ドルが実質的な米ドルペッグ制を採用している為に、香港ドルが非常に割安になってしまっているタイミングでした。
これに目をつけたあるヘッジファンドが、「いずれ、香港ドルの米ドルペッグ制は崩壊する」と見込んで、1米ドル=7.5のコールオプションを大量に買っていたという記事が英国のエコノミスト誌に載った時がありました。
結果は香港当局が、ドル買い香港ドル売りの徹底介入をしたために、1米ドル=7.75を切れずに1米ドル=7.5のコールオプションは紙くずになってしまったということがありました。
今回も香港ドルの米ドルペッグはずしを狙っているファンドがあると伝えられています。
6月10日のブルームバーグによると、次のようにあります。
ヘッジファンドマネジャーのカイル・バス氏が創業したヘイマン・キャピタル・マネジメントは、香港ドルと米ドルとのペッグ(連動)制が崩壊する方向にいちかばちかの賭けを行う新たなファンドをスタートさせている。
事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
非公開情報であることを理由に関係者が匿名を条件に語ったところでは、バス氏は香港ドルのオプションを使い、新たなファンドの資産に200倍のレバレッジを導入する手法を用いる。
このストラテジーは、香港ドルが米ドルに対し下落すれば桁外れの利益を生むが、ペッグ制が1年半後も無傷のままなら、投資家は資金を全て失う仕組みだ。
香港ドルが40%下落すればリターンが64倍になる可能性をバス氏が潜在的投資家に伝えたと関係者1人は明らかにした。
さて、話を本題に戻しますが、米国が「香港の優遇措置を停止する」と表明したにもかかわらず、最近は香港ドルが対ドルで強さを増しつつあり、13日のブルームバーグ香港金融管理局(HKMA)は香港ドルと米ドルのペッグ制防衛を図るため6営業日連続で香港ドル売り介入を実施したのですが、この連続期間は2014年以来で最長となっています。
HKMAが12日に実施した香港ドル売りは14億3400万香港ドル(約199億円)規模。
4月に介入を開始してからの総額は494億5000万香港ドル(6,860億円)にも達しています。
政治的に弱いはずの香港ドルが予想に反して強い理由は3つ考えられます。
- 米ドルとの金利差
- 中国企業の株式売り出しに対する需要増
- 当局の検査に向けた銀行の現金確保を背景にした香港ドル相場の強さ等
このうちの①米ドルとの金利差について少し検討してみたいと思います。
米ドルの利回りよりも香港ドルの利回りのほうが有利であることについては両者の値差は下がって来てはいますが、両通貨の1か月物のレートは先週の段階で香港ドルは米ドルよりも0.60%高かったこともあり、まだまだ香港ドル買い米ドル売りのキャリートレードはペイしています。
キャリートレードというのはリーマンショック前に一世を風靡した手法のことで、金利の高い通貨をロングし、同時に金利の低い通貨をショートするというトレードのことです。
当時はポンド買い円売り(つまりポン円の買い)とか豪ドル円や、ドル円の買いというキャリートレードが一般的でした。ミセスワタナベという言葉もはやりました。
両通貨のレート差が0.20%くらいまではキャリートレードが続く可能性があり、もうしばらく香港ドルの優位性は続きそうです。
しかし、金利差が縮まり始めたのを確認して、37年間誰も成功しなかったドルとのペッグはずし、オプションを使ってカイル・バス氏と同じ方向に乗ってみようか?!
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