金利と為替と株価の関係性とは?
為替の動きは程度金利差で決まってくる部分が大きいといわれています。
日本の政策金利は-0.1%に対し米国の政策金利は0.00%-0.25%なので、明らかに米国の短期金利の方が高いですね。
また両国の10年金利を比較すると、日本の10年金利は過去1か月は上がり気味とは言え-0.005%から0.050%のレンジ、米国の10年債利回りは0.5%から0.725%のレンジです。
それならば、ドル円はどんどん上がっていきそうに思いますが、実際はドル円は売られ気味で推移しています。
金利差は効いていないのでしょうか?
8月8日の日経新聞には興味深い論説記事が掲載されていました。
FRBは3月、ゼロ金利政策の再開と米国債の無制限買い入れに踏み切った。
人為的な低金利政策と大量の資金供給でドル安を誘い、リスク資産の価格上昇を招く、FRB主導の株高政策は成功したとの見方が増えている。
中央銀行が名目金利をインフレ率より低く抑えるため、長期金利から期待インフレ率を引いた実質金利は過去最低のマイナス1.08%まで低下。
これは、現金保有に対する「ドル課税」と言える。
FRBは9月にも、消費者物価上昇率が目標の2%を超えることを当面容認する指針で、金融緩和をさらに進めるようだ。
インフレ期待が一段と高まれば「実質金利はマイナス2%まで低下する」(エバコアISIのデニス・デバッシャー氏)。
世界で「金利消失」が進むなか、追加される1%のドル課税を避けるだけでも、実質的なイールドハント(利回り狩り)につながる。
中央銀行がリスクのフロア(底)を引き上げ、民間投資家がよりリスクの高い資産に資金を移す「ポートフォリオ・リバランス効果」が強まる。
というものでした。
筆者が特に興味深く思ったのは、「長期金利から期待インフレ率を引いた実質金利は過去最低のマイナス1.08%まで低下。これは、現金保有に対する「ドル課税」と言える。」の部分です。
ドルは実質金利がマイナスなので、価値が目減りしていくので、ドルキャッシュあるいは米国債を持っていても、実質的に価値が減っていくので、それならば株へ資金を回そうとの判断で株価が買われているという議論です。
ドルは実質金利がマイナスということは、インフレ率を加味すればということになります。
ドルの長期金利は、前出のように日本の10年金利は-0.005%から0.050%のレンジ、米国の10年債利回りは0.5%から0.725%のレンジで推移しています。
この通使われる市場データの数値を名目金利と言います。
名目金利は日本の10年金利の方が低いですが、インフレを加味する実質10年金利は米国の方が圧倒的に安くなっています。
これはひとえに日本と米国の「期待インフレ率」の差によるものです。
東海東京証券の証券用語集によると、次のとおりです。
期待インフレ率とは、予想インフレ率とも呼ばれ、実際に起こった物価上昇率ではなく、消費者や企業、市場などが予想するインフレに対する将来の予測値のことです。
期待インフレ率は実際のインフレ率と連動するとともに、先行して動く傾向があり、各国の中央銀行はその動向を把握し、目標値を定めてそれに収まるような金融政策を行うこと多いです。
期待インフレ率を示す代表的な指標には、普通国債と物価連動国債の利回りの差から逆算して求められるブレークイーブンインフレ率(BEI)があります。
話が混みいってきてしまいましたが、日本の6月の前年同月比の実際のインフレ率は0.1%であった一方、米国のそれは0.6%と上昇しています。
ましてエネルギーや食料品を除くコアインフレは前月比でも0.2%のプラス前年同月比では1.2%のインフレ率増加になっているからです。
その数値を実際の長期金利から引いてみるだけでも実質金利がマイナスになっているということがわかります。ということで、日米の実質金利差ではドル円は売られやすいという理屈になります。
今度は金利と株価の関係について考えてみたいと思います。
日経新聞の記事は次のように続けています。
株高はどこまで続くのか。
参考となるのが長期間、人為的に低金利を続けた70年前だ。
FRBは1942年から51年にかけ、短期金利のくぎ付けと長期金利の上限を設定する「イールドカーブ・コントロール(YCC)」を実施した。
バンク・オブ・アメリカの分析では導入の前半にあたる42年3月から46年6月にかけ、主要株価指数の水準は2倍に、7倍だったPER(株価収益率)は21倍に上昇した。
第2次世界大戦で公的需要が膨らんだのを考慮しても、YCCの開始はPERの切り上げによる大幅な株価上昇を招いた。
ちなみに、PER(ぴーいーあーる、株価収益率)については日本証券業協会の金融・証券用語集によれば
株価が割安か割高かを判断するための指標。
株価収益率(Price Earnings Ratio)のこと。
利益から見た「株価の割安性」。
株価が「1株当たりの当期純利益(単に1株当たり利益、1株益ともいう)」の何倍になっているかを示す指標。
一般にPERが高いと利益に比べて株価が割高、低ければ割安であるといわれます。
当期純利益は、会社が1年間の営業活動で株主全体にもたらした利益で、この中から配当が支払われ、残りは株主の資産(純資産)として蓄えられていきます。
それを1株当たりで表したのが「1株当たりの当期純利益(=1株益)」です。
と解説されています。
日経はさらに
債券市場はすでにFRBの管理下にあるとされ、導入の正式発表がなくても実質的にYCCは始まっているとの見方が多い。
ゴールドマン・サックスの分析では、長期投資家は長期金利が0.5%近辺の状態では、金利が2%以上の状況に比べ、2.5倍高いバリュエーション(投資尺度)でも株式を選好するという。
長期金利が2%台だった2019年まではS&P500種株価指数の適正なPER水準はおおよそ17倍とされた。
足元は22倍台と19年ぶりの高水準にあるが、70年前の経験を参考にすれば、PERが一段と切り上がっても不思議ではない。
としています。
若干わかりにくい説明ですが、低金利下PER的には株価はまだ上がってもおかしくないということになりそうです。
もう一つ株価、特に世界の株価を引っ張っている米株価が上がる理由は債券市場の長短金利差でも説明できるようです。
和(なごみ)キャピタルの村松氏によれば、米国10年債の利回りは0.5%で下げ止まり、(2年債利回りは0.1%前後なので)米国10年金利と2年金利とのスプレッドは(昨年の秋の底値以来)0.4%-0.6%と拡がりつつあります。
このスプレッドがマイナスになる(=逆イールド)場合は株価には要注意。
ただ、この長短金利差が拡大し続ければよいというわけではありません。
投資家が資金を株式市場に投入するのか債券市場に投入するのかの判断基準にイールドスプレッドというものがあって、これは(S&P500株式益利回りー10年債金利の差)のことで、経験的にこれが3%以下になると株価が割高と思われるので、株が売られるとのことでした。
東海東京証券によれば
イールドスプレッドとは、債券の利回りの差を表します。
異なる債券の利回りを比較する際に用いられることもありますし、株式の配当利回りと債券の利回りを比較して投資する対象を選ぶときにも利用されます。
とあります。
現在この米国の株式の配当利回りと債券利回りとのイールドスプレッドは3.5%近辺、長短金利差は0.5くらいですので、まだもうしばらくは株価が下がる環境ではなさそうです。
著者プロフィール

齊藤トモラニ 老舗FXスクール代表。
FX会社主催のセミナー講師としても活躍する。
著書に『簡単サインで「安全地帯」を狙うFXデイトレード』
ロンドンfxの松崎美子さんと一緒にYouTube「fxの流儀」を配信中
<FXの流儀youtubeチャンネル>
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