英国EU離脱直前情報 利下げはあるのか?ポンドの今後は? 

ロンドンFX松崎美子氏のプロフィール詳細はこちら

1月30日に開催される英中銀Super Thursdayでの政策金利変更の可能性は、50/50と言われている。ここまで意見が割れたSuper Thursdayは過去に例がなく、どのような結果が発表されようが、ボラティリティーが高まることが予想される。

1月30日が注目される理由

昨年12月の総選挙で、保守党は1987年以来の大勝を遂げた。マジョリティ80議席という優位性を生かし、ボリス・ジョンソン首相(以下、ボリス)は、約3年ぶりに英国のEU離脱協定法案を正式な法律とした。英国の進む道を取り巻く最大の不安材料が一つ消えたことは、英国に住む人々や企業に安心感を与え、1月に入ってからの経済指標には改善が見られるようになった。

Brexit不安の払拭に加え、3月に予定されている来年度予算案では、財政拡大が約束されており、マーケット関係者の間では、「このまま行けば、英国経済が持ち直すのは時間の問題だろう。」という楽観論が出てきている。

しかし、喜ぶのはまだ早い。この楽観論と並行し、英国金融政策理事会(以下、MPC)メンバーが3人続けて「転ばぬ先の杖の利下げ」支持の発言をしたので、マーケットは大騒ぎ!

現在も「改善期待が持てる経済指標 vs ハト派発言が続くMPCメンバー」のジレンマを抱えたままであり、全く予断を許さない状況でSuper Thursdayを迎えることとなった。

経済指標をチェック!

1月に入り、経済指標は本当に改善しているのか?そこで、12月総選挙以降発表された注目度の高い経済指標の結果を、まとめてみた。

出典: 英統計局、マークイット社、ハリファックス

1月分の経済指標に黄色のハイライトを入れたが、確かに改善されている。もう一点加えると、12月の数字ではあるが、英国経済のアキレス腱である住宅市場の健康度を示す住宅価格指数が大きく改善しているのも、利下げの正当性に疑問を投げかけるだろう。

MPC9名の理事たちの発言をチェック!

MPC9名の理事の過去の発言を参考にして、今回どのような票を入れるか考えてみた。これはあくまでも私個人の考えであるため、正解かはわからない。

カーニー総裁
利下げ
英経済が思わしくない状況となれば、英中銀は躊躇なく動く。
英国がEUを離脱したからと言って、経済が回復する保証は、どこにもない
 
カンリフ副総裁(金融安定担当)
据え置き
長期に渡る緩和政策の継続は、金融市場の安定を損ねる
 
ラムズデン副総裁(金融市場/銀行担当)
据え置き
英国がEUからスムーズに離脱できるのであれば、将来的に金融政策の方向性は、引き締めとなるのが自然であろう
 
ブロードベント副総裁(金融政策)
据え置き
英国経済が英中銀の予想通りに展開すれば、金融政策の方向性は利上げであろう
 
ホールデン英中銀主席エコノミスト
据え置き
驚くような景気の悪化が確認されない限り、利下げをする意味が感じられない
 
テンレイロ理事
据え置き/利下げ不明
EUとの貿易交渉の先行きに不透明感が出てきたり、需要の低下により世界経済が思わしくなかったりすれば、私は政策金利カットを支持するだろう
 
ブリハ理事
利下げ
英国経済の回復が確実なものであるという自信が持てない限り、利下げ票を投じることになるだろう
 
ソーンダース理事とハスケル理事
2人とも利下げ
この2人は、既に利下げ票を投じている
 

投票配分予想

上述の各理事の発言を元にして、タカ派/ハト派を作成したが、早速困ったことになってしまった……

個人的には、1月30日は「5対4で据え置き」を予想しているが、テンレイロ理事次第になりそうだ。

Super Thursday 4つのシナリオ

それでは最後に4つのシナリオをご紹介しよう。

シナリオ① 利下げ決定、しかし「一回ポッキリの利下げ」

4対5で利下げ決定。しかし、カーニー総裁は記者会見で、「インフレ率の下落を確認し、今回は先手を打つ形で利下げに踏み切った。これ以上の追加緩和などの継続性は、ない。」という趣旨の発言。

この場合、3月から就任するベイリー新総裁は、強制的に「緩和」に縛りつけられずに済み、自由に英中銀を運営できる。

ポンドの動き

利下げ決定の投票配分にもよるが、ひとまず利下げ発表を受け、ポンドは下落。現在のマーケットは、きちんと利下げを織り込んでいないと思うので、意外と初動の下げはキツイかもしれない。

しかし、時間が経つにつれて、マーケット参加者は、「この利下げは、一回ポッキリ。」と判断し、ポンドは上昇に転じるのではないか? 特に、カーニー総裁が利下げ票を投じ、投票配分が4対5のギリギリ利下げの場合、次回の投票からは同総裁が抜け、ベイリー新総裁と交代するので、投票配分の変更も考慮すべきだろう。

シナリオ② 据え置き決定、ただしまだまだ予断を許さない

雇用市場が依然として健全であり、PMIの数字も良かったので、テンレイロ理事などのハト派の理事が据え置きを投じた場合のシナリオ。

カーニー総裁は記者会見で、「紙一重の決定だった。今後の決定はベイリー新総裁にバトンタッチをするので、完全に利下げの可能性がなくなった訳ではない。」という捨て台詞を残すかも?

ポンドの動き

据え置きを受け、ポンドは上昇。しかし、記者会見でのカーニー総裁の発言内容によっては、全戻しもあり。

シナリオ③ 6対3で据え置き

思ったより据え置き票が多くなるシナリオ。これは結構、意外な展開かもしれない。

ただし、問題はカーニー総裁が記者会見で、今後も据え置きという趣旨の発言をするのか?それとも、今回は見送ったが、まだまだ油断はならないと言うのか?それにより、ポンドの動きが大きく変わる。

ポンドの動き

初動はポンドが大きく上昇。記者会見での発言次第で、次の動きを考える以外、打つ手なし。

シナリオ④ 利下げ決定、追加緩和にも言及

個人的には、このシナリオはないと考えているが、念のために加えた。

話しが前後して恐縮であるが、英中銀の金融報告書(旧四半期インフレーション・レポート)は、「スムーズな離脱」を前提に作成されてきた。ないとは思うが、今回のSuper Thursdayではこの前提を崩し、「EU離脱後の移行期間中に貿易交渉がまとまらず、合意なき離脱となる」と前提を変更し金融報告書を作成した場合、このシナリオが生きてくる。

もしこうなると、ベイリー次期総裁の金融政策における選択肢を完全に奪ってしまうのが、恐ろしい。

ポンドの動き

ポンド急落。マーケットはポンド・ロングと考えているので、下げはキツイかもしれない。

おまけの注意事項

FXを初めて間もない個人投資家さんは、Super Thursdayと聞いても、ピンとこないかもしれない。そこで、ざっくりとした説明を加えよう。

英中銀は、2015年8月から、①金融政策の決定、 ②投票配分の公表(議事要旨)、 ③3ヶ月に一度のマクロ経済予想:金融政策報告書(旧:四半期インフレーション・レポート)の公開、④総裁/副総裁による記者会見。これら全てを同じ日に実施することに決定し、「Super Thursday」と言う名称で呼ばれるようになった。①〜③までは、現地時間昼12時(日本時間:冬時間 21時、夏時間 20時)発表。④は30分遅れとなる。

通常、Super Thursdayは、毎年2・5・8・11月に実施されるが、今回に限り、カレンダーの都合上、1月30日実施となった。

発表と記者会見の間に30分のズレがあるため、マーケットはまず①〜③の材料で動き、④の記者会見や質疑応答で、次の動きを見せる。合計約90分の重要イベントとなるため、ポンド取引をする人は、確実にSuper Thursdayの日を押さえておこう!

著者プロフィール

松崎 美子(まつざき・よしこ)
スイス銀行東京支店でディーラーアシスタントとして入行する。
その後、1988年に結婚のため渡英。ロンドンを拠点に、バークレイズ銀行本店ディーリングルームに勤務し、日本人初のFXオプション・セールスとなる。
1997年に米投資銀行メリルリンチ・ロンドン支店でFXオプション・セールスを務め、2000年に退職。
その後、個人投資家として為替と株式指数の取引を自宅からスタートしながら、2007年春にブログ『ロンドンFX』や、FX会社のコラムや動画配信、セミナーなどを通じて、日本の個人投資家に向けて欧州直送の情報を発信している。英国在住の為、ポンドの情報については詳しい内容を常に配信し続けている。著書に「松崎美子のロンドンFX」「ずっと稼げるロンドンFX」(ともに自由国民社)
DMMにてオンラインサロン「FXの流儀」を開設。また2019年よりyoutubeにてライブ配信で生きた欧州情報の配信を行っている。

ブログ 「ロンドンFX」
http://londonfx.blog102.fc2.com/
Twitter @LondonFX_N20
FXの流儀youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC30w5H2MGSs6wP1YFjPeXBg
DMMサロン
https://lounge.dmm.com/detail/1215/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です