【3月31日 これまでの主なニュース】
■クオールズ副議長、FRBは2%超のインフレ率に強くコミット
米連邦準備制度理事会(FRB)のクオールズ副議長(銀行監督担当)は、インフレ率を目標の2%を超える水準に押し上げるとの金融当局の言葉を投資家は信ずるべきだと述べた。
クオールズ氏は30日、ピーターソン国際経済研究所(PIIE)での金融規制に関するスピーチの後で、「連邦公開市場委員会(FOMC)はインフレ率が目標値の2%を幾らか上回っても問題ないと考えているとの見方は非常に確実性が高いと思う」と発言。「時間をかけて平均化していく。これは非常に確実性の高いFOMCのコミットメントであり、私はこれを強く支持する」と言明した。
FOMCは昨年8月に期間平均で2%のインフレ率を目指すと表明。雇用の最大化というもう一方の責務に関しても姿勢を変更し、新たなアプローチを発表した。これに伴い、インフレ期待値を抑制できなくなりつつあるとの兆候が示されない限り、失業率が低下しても予防的な利上げという手段は取らない方針だ。
クオールズ氏は「早まるべきではない」と述べ、「マクロ経済や金融政策の動向を過去10年だけでなく、15年や20年分までも見ることによって、優れた結果を導き出せるのではないだろうか」と話した。
(昨日のウォラーFRB理事発言)
・FRBは政府の資金調達や債務返済コスト削減のために金融政策を行わない。
・FRBは雇用、物価安定の目標達成のためだけに行動。
・FRBはバックオフィス業務において米財務省と緊密に連携する必要。
・米財務省とFRBの協力は金融危機や極端な市場の機能不全の対応において必要不可欠。
・FRBはインフレ抑制において金利に依存しないようにする必要。
・経済、金融政策の見通しについては言及せず。
・FRBの現在の手段は良く機能している。
・イールドカーブ・コントロールには多くの疑問。
・利回りの動きは景気回復を反映。
・経済に対する市場の反応を邪魔したくはない。
・現時点で利上げには長い道のり。
■IMF、世界経済成長見通し上方修正へ 不確実性は継続
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は30日、来週発表する最新の世界経済見通し(WEO)で、2021年と22年の世界的な経済成長率予想を上方修正すると明らかにした。ただ世界的な金融情勢を巡る不確実性はなお高いとの認識を示した。
IMFが1月に示した成長率見通しは、21年が5.5%、22年が4.2%。ゲオルギエワ専務理事は外交問題評議会(CFR)で、米国の財政支出拡大のほか、先進国の新型コロナウイルスワクチン接種による景気回復を反映し、IMFは見通しを上方修正すると述べた。
ただ状況の進展は一様ではないと指摘。「誰もがどこでもワクチンの接種を受けられるわけではなく、あまりにも多くの人々が失業に直面し、貧困が増大している」とし、「われわれの世代で最大の試練に直面している」と語った。
その上で、米国の力強い経済成長で貿易が促進され、多くの国が恩恵を受けるとしながらも、金利の急激な上昇を招く可能性があると指摘。これにより新興国と途上国から資本が流出し、特に外部資金調達需要が高く、高水準の債務を抱える中所得国が困難な状況に直面する恐れがあると警告。当局者に対し金融リスクを監視し、過度なボラティリティーを未然に防ぐ措置を取るよう呼び掛けた。
■アーケゴス問題で世界の銀行損失100億ドルも、Wファーゴ「影響なし」
レバレッジを効かせた取引で損失を出した投資会社アーケゴス・キャピタルを巡る問題で、当局による規制強化が焦点になっている。
アーケゴスは数十億ドル規模の資産を運用しているとされるにもかかわらず、ヘッジファンド元幹部の「ファミリーオフィス」として運営されているため、規制当局から直接の監視をほとんど受けていなかった。ファミリーオフィスは裕福な家族が資産を管理運用するために設立するという。
JPモルガンのアナリストらは30日、アーケゴス問題で世界の銀行の損失が100億ドルに達する恐れがあるとした上で「業界の通常の巻き戻しシナリオをはるかに超えている」と指摘。「第1・四半期の業績に大きな影響を与える可能性がある」と表明したクレディ・スイスについては、週内に完全な情報開示が行われると予想したほか、「規制当局が当該イベントを注意深く調査することを期待しており、とりわけ新政権の下で何らかの変更があっても不思議ではない」と述べた。
OANDAのシニア市場ストラテジスト、エドワード・モヤ氏は「アーケゴスのマージンコール(証拠金請求)の影響は収まっているもようだが、規制当局の監視を巡る話は当面なくならないだろう」とした上で、「全てのプライムブローカレッジが各自の帳簿をチェックしており、ファミリーオフィスやヘッジファンドに対してレバレッジを下げるよう圧力をかけ始める可能性がある」とした。
■ETF買い入れ、「従来以上にめりはり」=黒田日銀総裁
日銀の黒田東彦総裁は30日、共同通信社「きさらぎ会」での講演で、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の買い入れについて「従来以上にめりはりをつけた買い入れを行うことで持続性と機動性を高めることができる」と説明した。講演後の質疑応答では、政府が進めるグリーン化・デジタル化について、日本の成長力強化に極めて重要な施策であり、「日銀は緩和的な金融環境を提供することで変革に向けた動きをサポートしていくことが基本になる」と述べた。
黒田総裁は気候変動リスクへの対応について、実体経済や金融システムにも影響を与えることから中央銀行の使命にも関係してくると指摘。「物価の安定と金融システムの安定という使命に即して必要な対応を検討していく」と述べた。
<金利の大幅上昇に警戒感>
日銀は18―19日の金融政策決定会合で政策点検の結果を取りまとめ、イールドカーブ・コントロール(YCC)の運営やETFなど資産買い入れの手法を見直した。黒田総裁は講演で、政策点検について詳しく説明した。
黒田総裁はETF購入について、年12兆円を上限に「市場の状況を見極めながら、必要に応じて、買い入れを行う」と述べた。買い入れ対象をTOPIX連動型に一本化したことについては「一部の銘柄の株式の間接保有比率が偏って高まることを避けるため、今後、指数の構成銘柄が最も多いTOPIXに連動するETFのみを買い入れることにした」と説明した。
日銀は決定会合で、長期金利の変動幅を「上下0.25%程度」と明確化した。黒田総裁は、YCCの持続的な運営のためには「市場機能の維持と適切な金利コントロールとの両立を図ることが重要だ」と指摘。「金利の変動が一定の範囲内であれば、緩和効果を損なわず、国債市場の機能にプラスに作用することが点検で行った分析から改めて確認された」と述べた。
その一方で、金利の大幅な上昇に警戒感を示した。黒田総裁は「金融緩和の効果を確保するためには、金利が大きく上昇する場合にはそうした動きをしっかりと止める必要がある」と指摘。今回導入した連続指し値オペを活用することで「必要な場合に、これまで以上に強力に金利の上限を画することが可能になる」と述べた。
対照的に、日々の動きの中で金利が一時的に下限を下回るような場合には「金融緩和の効果を損ねることはないので、そうした動きには厳格には対応しない」と明言した。
<来年度は「はっきりとしたプラス成長」>
黒田総裁は、足元の経済について「対面型サービス以外の経済活動は、世界貿易の回復や巣ごもり需要にも支えられ、相応に維持されている」と話し、感染症の影響に経済が
左右される状況は続いているものの「持ち直しの動きは維持されている」と述べた。「まもなく始まる2021年度は、今年度の落ち込みの反動に加え、政府の追加経済対策の効果もあって、はっきりとしたプラス成長になるとみている」とも語った。
<金融政策「やや複雑になっている」>
講演後の質疑応答では、日銀が修正を重ねてきたことで金融政策の全体像が複雑になったとの指摘に対し、黒田総裁は「手段としてやや複雑になっている面がある」と認めた。その上で、政策の目標や考え方を示していくことに加えて、経済・物価動向を分かりやすく示していくことも重要だと指摘。「コミュニケーション面で不断の努力を重ねていきたい」と述べた。
米国政府の積極財政については「米国経済の回復は日本を含め、世界経済にとって望ましい」との考えを示した。黒田総裁は「米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が経済再開に伴う支出増などから物価の押し上げ圧力は生じ得るが、これらはインフレ率に一時的な効果しか与えない可能性が高いと述べている」と指摘。その上で「私自身もパウエル議長の見解が中庸を得たものと考えている」と語った。
【本日の予定(要人発言・イベント)】
10:00 中国製造業PMI・非製造業PMI・コンポジットPMI(3月)
16:00 レーン・フィンランド中銀総裁、ウェブ講演
16:30 ビスコ伊中銀総裁、イベント参加
22:00 ビルロワドガロー仏中銀総裁、オンラインイベント参加
23:30 米週間原油在庫統計
バイデン米大統領、インフラ再構築計画発表
OPECプラス共同閣僚監視委員会
【経済指標】
時間 | 指標名称 | 前回ドル円変動幅 | 前回(改定値) | 予想 | 結果 |
08:00 | 韓国・鉱工業生産指数 02月 | +1.5pips | -1.6% (-1.2%) | 1.1% | 4.3% |
08:50 | 日本・鉱工業生産(速報値) 02月[前月比] | +1.2pips | 4.3% | -1.3% | -2.1% |
08:50 | 日本・鉱工業生産(速報値) 02月[前年比] | -5.2% | -1.8% | -2.6% | |
09:30 | 豪・住宅建設許可 02月 | +1.2pips | -19.4% | 3.0% | 21.6% |
10:00 | 中国・製造業PMI(購買担当者景気指数) 03月 | 50.6 | 51.2 | 51.9 | |
15:00 | 英国・ネーションワイド住宅価格指数 03月[前月比] | +1.0pips | 0.7% | 0.4% | -0.2% |
15:00 | 英国・ネーションワイド住宅価格指数 03月[前年比] | — | 6.9% | 6.4% | 5.7% |
15:00 | 英国・実質GDP(確報値) 第4四半期[前期比] | -4.0pips | 1.0% | 1.0% | 1.3% |
15:00 | 英国・実質GDP(確報値) 第4四半期[前年比] | — | -7.8% | -7.8% | -7.3% |
15:00 | 英国・経常収支 第4四半期 | -4.0pips | -157億ポンド | -348億ポンド | -263億ポンド |
15:45 | 仏・生産者物価指数 02月[前月比] | +0.3pips | 1.2% | — | 0.8% |
15:45 | 仏・生産者物価指数 02月[前年比] | — | 0.4% | — | 1.8% |
15:45 | 仏・消費者物価指数(速報) 03月[前月比] | +0.3pips | 0.0% | 0.7% | 0.6% |
15:45 | 仏・消費者物価指数(速報) 03月[前年比] | — | 0.6% | 1.2% | 1.1% |
16:00 | トルコ・貿易収支 02月 | +0.9pips | -30.3億ドル | -34.0億ドル | -33.0億ドル |
16:55 | ドイツ・雇用統計 03月[失業率] | +0.7pips | 6.0% | 6.0% | 6.0% |
16:55 | ドイツ・雇用統計 03月[失業者数] | — | 0.9万人 | -0.3万人 | -0.8万人 |
18:00 | ユーロ・消費者物価指数(HICP)(概算値速報) 03月[前年比] | +0.2pips | 0.9% | 1.4% | 1.3% |
18:00 | ユーロ・消費者物価指数(HICP)(概算値速報) 03月[コア・前年比] | — | 1.1% | 1.1% | 0.9% |
20:00 | アメリカ・MBA住宅ローン申請指数 03/20 – 03/26 | -3.2pips | -2.5% | — | -2.2% |
21:00 | 南ア・貿易収支 02月 | -0.1pips | 118億ランド | 221億ランド | 290億ランド |
21:00 | ブラジル・雇用統計 01月 | -0.1pips | 13.9% | 14.1% | 14.2% |
21:15 | アメリカ・ADP雇用者数 03月 | -0.3pips | 11.7万人 | 55.0万人 | 51.7万人 |
21:30 | カナダ・鉱工業製品価格 02月[鉱工業製品価格] | -8.1pips | 2.0% | 2.5% | 2.6% |
21:30 | カナダ・鉱工業製品価格 02月[原材料価格指数] | — | 5.7% | — | 6.6% |
21:30 | カナダ・実質GDP(前月比) 01月 | -1.1pips | 0.1% | 0.5% | 0.7% |
22:45 | アメリカ・シカゴ購買部協会景気指数(PMI) 03月 | -0.4pips | 59.5 | 61.0 | 66.3 |
23:00 | アメリカ・中古住宅販売成約指数 02月 | +6.4pips | -2.8% | -3.0% | -10.6% |
23:30 | アメリカ・週間石油在庫統計 03/20 – 03/26[原油在庫] | +2.3pips | 191.2万バレル | -121.2万バレル | -87.6万バレル |
23:30 | アメリカ・週間石油在庫統計 03/20 – 03/26[ガソリン在庫] | — | 20.4万バレル | 34.5万バレル | -173.5万バレル |
23:30 | アメリカ・週間石油在庫統計 03/20 – 03/26[留出油在庫] | — | 380.6万バレル | 95.8万バレル | 254.2万バレル |
※本日は世界各国で雇用統計(アメリカは明後日)ですので為替の動きが予想されます。
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