アルケゴス問題について触れてみた

「アルケゴス問題」
アルケゴスは、規制の甘さを突いて、積極的にレバレッジをかけてリスクテイクを重ねていた。アルケゴスと取引を行った金融機関は、そのリスクを十分に評価できていなかったことが大きな要因です。
アルケゴスが保有していた株価が想定外の方向に動いた結果、巨額の損失を抱え、資金繰りに行き詰まったとみられます。
この”アルケゴス問題”の影響は今後軽視はできない。規制の問題やカネ余りの影響などによって過度なリスクテイクが放置されていたことは、金融市場の脆弱性が高まっていることが示唆されています。
過去にも資産価格が過熱した結果、投資ファンドが損失を抱え事業の運営に行き詰まり、結果として世界的な金融システムの不安定性が高まったことは多く、今回のアルケゴス問題には、そうしたケースと重なる部分があるように見えます。

 

アルケゴスとは?


大手ヘッジファンド“タイガー・マネジメント”のビル・フアン氏が設立した“ファミリーオフィス”(ファミリーオフィスとは、個人の金融資産を管理・運用する投資会社)

※主なファミリーオフィス
フアン氏は資金運用において、レバレッジ(金融機関から与信を受け少ない資金で大きな取引を行う事)をかけていました。そして自己資金以上の投資ポジション(持ち高)でこれまで大きな利得を得ていました。
その理由としては、

①ファミリーオフィスへの金融規制の甘さ
リーマンショック以降、米国では金融規制改革法等の金融規制を実施してきましたがその結果、外部顧客の資金を運用するヘッジファンドは証券取引委員会に登録を行い、株式などの持ち高(ポジション)や株主の構成、金融機関との取引、財務内容などを開示する義務を負っていました。しかし基本的には、個人の資金を管理・運用するファミリーオフィスは、規制の対象外に置かれていました。そのためリーマンショック以降、多くのヘッジファンドは外部顧客に資金を返し、ファミリーオフィスへの業態転換を行うことでこの規制から逃れようしてきました。(ですからファミリーオフィス=“影ヘッジファンド”呼ばれています。)
今回ファミリーオフィスへの規制が甘かったため、規制に苦しむ金融機関にとって重要な存在であった”アルケゴス”はそのリスクから逃れやすい状況にありました。

フアン氏が金融機関と行った相対取引の一つがCFD取引であり。株式を対象とするCFD取引は、現物株を売買せず、取引の開始時と終了時の原資産の価格差によって決済を行います。

フアン氏は金融機関に証拠金を入れ株式を原資産とするCFD取引を大規模かつ積極的に行っています。想定通りに買い建てた(売り建てた)銘柄の株価が上昇(下落)すれば、レバレッジの効果によって利得はかさ上げされます。

逆に、資産価格が逆に動くと損失は増大します。損失が許容レベルを超えると、金融機関はリスクに見合った追加証拠金差入れ(追い証)を取引相手に求める(マージン・コール)こととなります。
相手が追い証に応じない場合は、金融機関は取引相手とのポジションを強制的に解消します。損失が自己資本を上回ると取引相手の資金繰りは行き詰まり、債務不履行=デフォルトが発生します。(どの程度の損失発生が追い証のトリガーになるのかは、金融機関によって異なります。)

フアン氏は他のデリバティブ取引も活発に行い、特定銘柄のポジションを積み増しをしています。その点に関して、法令遵守がされていたか、現在調査されているところです。

②「アルケゴス問題発生の経緯を考察」
2月半ば以降、金利上昇によって米国株の変動性は高まっていました。
取引時間中の値動き荒く、乱高下する場面。その状況下、フアン氏は予想と異なる株価の動きによって買い建て(ロング)と売り建て(ショート)の両サイドで損失に直面し始めていました。
決定打は、3月22日のバイアコムCBSが増資発表したこと。同社株は売られ、“売り⇒下落、下落⇒売り”という動きが鮮明化しました。このことが損失を急拡大させ、アルケゴスへの追い証を入れることができませんでした。

3月26日に一部金融機関はフアン氏にデフォルトを宣告、200億ドル(約2.2兆円)の株式ポジションの解消を迫りました。フアン氏は金融機関に担保として差し入れていた資産の売却がなされています。

そしてこれが、ファン氏の保有していた”ディスカバリー”などメディア関連銘柄の急落の原因へとつながったようです。

想定外の損失拡大に直面した金融機関は、我先に資産の売却(投げ売り)を行ってアルケゴスに絡むリスクから逃れよう考えました。対応の遅れやアルケゴスとの取引規模などによって、日欧の大手金融機関に巨額の損失が発生したと考えられます。ここで思い起こされるのはリーマンショックの“端緒”です。

③アルケゴス問題は、特定の金融機関への影響だけでなく、世界の金融システムの不安定性を高める一因になりかねません。
アルケゴス問題と同様、デリバティブ取引によってレバレッジをかけ、より大きな利得を目指す投資ファンドは多いのが現状です。見方を変えれば、アルケゴス問題は、世界の大手金融機関が許容レベルを上回るリスクを蓄積していることを確認するいい機会となりました。

資産価格の過熱感が高まりますと、一部金融機関などのリスクテイクの過大さが顕在化し、結果として世界の金融システムにストレスがかかることがあります。
2007年8月上旬、仏大手金融機関BNPパリバ傘下の投資ファンドが証券化商品の価値下落によって運用に行き詰まった(パリバショック)があります。証券化商品の価値は急落し、世界各国の金融機関が巨額の損失を計上しました。結果的にリーマンショックにつながったわけです。

④「金融機関同士の疑心暗鬼」
今すぐ、そうした展開が起きるとは考えづらいのですが。アルケゴス問題の影響は目を背けることはできません。特に、金融システムにおけるカウンターパーティー・リスクは高まりつつあります。
野村HDは米ドル建普通社債の発行を一時中止しました。低金利環境下、国債よりも利回りの高い社債の需要は強いのですが、それでも発行が見送られたということは、アルケゴス問題の影響を警戒する投資家が少なくないということです。多くの投資家はその状況を「金融機関同士の疑心暗鬼」と評しています。
さらに、アルケゴス問題が他の金融機関の損失発生の原因となる可能性があり、現在米国ではSECが情報収集に注力し、投資ファンドへの規制強化に関する議論も進む流れとなります。
これは投資家にリスク削減を志向させる要因となりそうです。現在アルケゴス問題の全貌は明らかになっておらず、今後の展開を注視する必要がありそうです。

ここまで読んでいただきありがとうございました

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