【この手順を守るだけ】FXの確定申告を税理士が解説!

はじめまして。

大阪市内で会計事務所を営んでおり、チャンネル登録者1,000人超のYouTuberとしても活動している税理士公認会計士の井下佳郎です。

真冬の寒さが続いております今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。

2月に入り、いよいよ確定申告シーズンの到来です。

2019年の投資成績はいかがだったでしょうか。

儲かった!という方も、損失を出してしまった!という方もいらっしゃると思います。

2019年の1月1日から12月31日までに発生した損益(所得)は、2020年2月17日から3月16日までに確定申告する必要があります。

本日は、誰でも簡単にできる確定申告の手順をご紹介します。

利益が出た方はもちろんですが、 損失を出してしまった方も「自分には関係ない」と思わず、 FX をしている方全員が必ず確認してくださいね。

※本記事は個人(所得税)の確定申告に係るものです。

また、国内FX業者(金融庁登録の金融商品取引業者)を前提としております。

FXに係る税金の基本情報

税率

FXの所得は「先物取引に係る雑所得等」に該当し、税率は一律で20.315%(*)です。

(*)内訳

  • 所得税15%
  • 住民税5%
  • 復興特別所得税0.315%

確定申告要否の判定

原則として雑所得は20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要です。 

しかし、 その他で確定申告が必要な方は、雑所得が1円でもあれば確定申告が必要です。

その他の一例として下記が挙げられます。

  • 給与の年間収入金額が2,000万円超
  • 医療費控除、寄付金控除(ふるさと納税)等を受ける必要がある
  • 自営業、フリーランス(元々確定申告が必要な方)

また、FXの損失がある方も 確定申告をお勧めします。(理由は3-2で後述します。)

なお、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は必要になります。

該当する方は、お住まいの市町村にお問い合わせ下さい。

所得の計算方法

所得はこのようにして計算されます。

所得 = 為替差益(スワップ含む) - 必要経費
 

為替差益は取引をしているFX 業者の年間取引報告書から確認ができます。

必要経費はFXの利益を得るためにかかった支出です。

一例としてこのようなものが挙げられます。

必要経費の一例
  • インターネット回線料*
  • 書籍代
  • セミナー受講料(それに係る旅費交通費や情報交換の懇親会費用も含む)
  • PC、モニター代*

 

*プライベートと兼用の場合、使用している時間等に応じて按分計算した部分が経費となります。

あくまで一例ですので、その他の支出で気になる方はお近くの税務署、税理士にお尋ね下さい。

確定申告手順

確定申告をする際の必要書類

確定申告をする際は、下記をお手元にご準備ください。

  • FX業者からの年間取引報告書
  • 必要経費の領収書(まとめていれば当該資料)
  • 給与所得の源泉徴収票(サラリーマンのみ)
  • 決算書(自営業のみ)
  • 各控除の基礎資料(社会保険控除、医療費控除、ふるさと納税等)

e-Taxを用いた確定申告手引き

さて、いよいよ確定申告の手順に移ります。

手書きの申告書作成は、面倒かつ誤りやすいので、今回はe-Taxという国税電子申告・納税システムを利用します。

インターネットで「e-Tax」と入力すると上位に「【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)」 というページが表示されるので、そちらをクリックします。

トップ⇒「個人で電子申告をするには」⇒「確定申告書を作成する」⇒「作成開始」の流れで進むと、税務署への提出方法を選択するページが表示されます。

提出方法はどれでも結構ですが、選択方法によっては、マイナンバーカードやICカードリーダーが必要だったり、事前登録が必要になるので、今回は「印刷して提出」を選択することにします。

「利用規約に同意して次へ」⇒「令和元年分の申告書等の作成」⇒「所得税」⇒「左記以外の所得のある方」と進みます。

そこまで行くと「申告書の作成を始める前に」という画面になり、生年月日を入力してください。

なお、青色申告の承認を受けている方は「申告の種類」項目にチェックをしてください。

「所得・所得控除等の入力フォームについて」はどちらでも結構ですが、今回はチェックなしにします。

「入力終了次へ」をクリックすると、所得を入力する欄が表示されます。

それぞれサラリーマンの方は給与所得、自営業の方は事業所得など、各所得の「入力する」より、所得の入力を行ってください。

FXの所得については、分離課税の所得のうち、「先物取引に係る雑所得等」に入力をします。

誤りやすいポイントとして、総合課税の雑所得に入力しないよう、ご注意ください。

取引の内容欄は、種類に「外国為替取引」、決済の方法に「仕切」と入力します。

「差金等決済に係る利益又は損失の額」欄に、年間取引報告書の損益を記入します。

経費は前述の必要経費を入力します。

経費が多岐にわたって書ききれない場合は「その他」など、まとめてしまっても大丈夫です。

過去3年間で先物取引に係る損失を確定申告している方は、本ページの下部にある「前年分までに引ききれなかった先物取引の差金等決済に係る所得の損失の額」欄に入力してください。

損失の繰越については後述します。

先物取引に係る雑所得等(日経225、金、原油の先物取引など)が複数ある場合「もう一件入力する」から同様に入力します。

なお、その他に該当する株の譲渡所得や配当がある方は、分離課税の所得欄にある「株式等の譲渡所得等」「上場株式等に係る配当所得等 」に入力をします。

全ての所得の入力が終われば、「入力終了次へ」をクリックし、各自該当する所得控除、税額控除の入力をしてください。

そこまで入力が終わると、「計算結果確認」が表示されます。

そこで税額の確認と、再度入力内容に誤りがないか確認をしてください。

それ以降は、指示通りに必要事項を入力して、完成した帳票を印刷、管轄の税務署に送付してください。

その際、出力される帳票内に提出書類の案内がありますので、提出書類を忘れずに添付することをご注意ください。

FXの確定申告での注意事項

損益通算

国内FX業者を複数使っている場合は、それらの損益は通算することが可能です。

FXのみならず、「先物取引に係る雑所得等」に該当する取引(日経225、金、原油の先物取引など)はすべて通算することが可能ですので、損失が出ている取引も、必ず集計するようにご注意下さい。

損失の繰越

FX取引等の「先物取引に係る雑所得等」に該当する取引合計で損失になった場合、損失を将来に繰り越し、翌年以降3年間で発生した同区分の所得から控除するができます。

簡単に例を出して解説します。

FX取引の成績は、1年目:1000万円、2年目:△800万円、3年目:900万円でした。

税率を簡便的に20%とすると、税金は1年目:200万円、2年目:0円、3年目:20万円になります。

2年目の△800万円を、確定申告により損失を繰り越すことで、3年目の所得900万円から2年目の△800万円を控除することが可能になり、残りの所得100万円に対して、税金がかかってくることになります。

次に誤りやすい例を解説します。

FX取引の成績は、1年目:△800万円、2年目:0円(取引なしや申告不要の利益のケース)、3年目:900万円でした。

この時に2年目も【必ず】確定申告をしてください。

2年目に確定申告をしておくことで、1年目の△800万円を3年目に繰り越すことができ、3年目の確定申告は、所得900万円から1年目の△800万円を控除することができます。

では2年目の確定申告をしていなかったらどうなるでしょうか。

この場合は、1年目の損失を、3年目に繰り越すことができません。

三年目の確定申告では、所得900万円に対して、そのまま税金がかかってくることになります。

ですので、FX取引で損失を出している方も必ず確定申告をするようにしてください。

海外FX業者

FX 取引をされている方の中には、海外の FX 業者を使用されている方もいらっしゃると思います。

海外FXの場合は「総合課税」が採用されているため、給与所得や事業所得を始めとした、その他の総合課税の所得と合算して税金が計算される仕組みになっています。

海外FX業者が別でも、海外FX同士の損益は合算して計算することができますが、総合課税の雑所得は3-2で解説した損失の繰越ができません。

また、海外FX業者は国内FX業者との損益と通算することはできません。

所得の性質(総合課税と分離課税)が異なるためです。

高いレバレッジで、大きく儲けることを魅力に、海外 FX 業者を宣伝するサイトも多いですが、 それらは高額なアフィリエイト報酬を目的としたものです。

取引自体のリスクはもちろんですが、税制面からしても、損失を繰り越すことができないというのは非常に痛いため、 筆者は海外FXでの取引はお勧めしておりません。

まとめ

今回はFXの確定申告について、解説をしました。

確定申告という年1度のイベントのため不慣れな方も多いと思います。

この手順に沿うだけで確定申告が終わるように、丁寧に記載しました。

しかし、人によって申告する内容は様々であり、これだけではわからないという方もいらっしゃると思います。

もっと分かりやすい解説を見たい!という方は、下のYoutube動画でも確定申告の手順を説明しているので見てみてください。

ご不明な点がある方は、YouTubeチャンネルなどからお気軽にお問い合わせください。

最後までご覧頂きありがとうございました。

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筆者紹介

井下佳郎(いのしたよしろう)

井下公認会計士税理士事務所代表。

大学在学中に公認会計士試験合格後、BIG4である有限責任監査法人トーマツ、EY税理士法人にて監査、IPO支援、税務などに従事。

業界では異端の27歳で独立開業し、現在30歳の新進気鋭の税理士公認会計士。

個人法人問わず、様々な支援を行っており、YouTubeチャンネルやLINE無料相談など従来にはない会計事務所の運営を行っている。

 

 

 

1 個のコメント

  • オオマル温泉です
    開業初年度の確定申告となります。収益がまだ十分なく個人提出ご容赦ください。FX個人トレーダー向けの損益通算の適切な解説書が世になく、税務署にあれもこれも確認に出向くべきだが事業の内容はじめどう説明すれば知りたい回答を引き出せるだろう、と迷っておりました。

    ところがここのFXコラムにポイントが簡潔に網羅されていて、これでなんとか乗り切れそうです。井下さんAkiさん本当に助かりました。ありがとうございます。

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