2018年以降ニュースでよく取り上げられ、たびたび話題となる米中貿易戦争とは一体何なのでしょうか?今回その経緯を中心に分かりやすく解説していきます。
米中貿易戦争の経緯

米中貿易戦争の始まりは、2016年にアメリカ合衆国大統領選挙期間中に遡ります。この選挙に当選することになるトランプ氏は、選挙期間中にアメリカと中国の貿易不均衡の話題に言及します。
アメリカには大幅な対中貿易赤字があり、トランプ氏は貿易赤字を良くないという考え方を持っていました。また、貿易赤字の原因の一つに中国が自国レートを不当に切り下げていると指摘しています。
トランプ氏が当選した後、貿易不均衡の問題を解消するため、米中包括経済対話メカニズムの立ち上げが行われたものの、これは頓挫してしまいました。2018年に入ると、アメリカによる中国への関税措置が取られることになります。
2018年に中国税関総署が発表した2017年の対米貿易黒字額は2758億1000万ドルと過去最高でした。もちろんこれは、アメリカにとっては対中貿易赤字額が2758億1000万ドルということを意味します。
2018年の1月22日、ついにアメリカが中国に対して緊急輸入制限(セーフガード)を発動することになりました。太陽光発電パネルに30%、洗濯機に20%という重い追加関税が課せられます。
さらにアメリカは中国に仕掛けます。今度は通商拡大法232条に基づいて鉄鋼とアルミニウム製品に追加関税をかけました。
米中貿易戦争の原因は?

このように、貿易戦争が始まったのはアメリカが中国に対して追加関税をかけたことが原因です。中国の商品に関税をかけると、アメリカの消費者は関税を上乗せした値段で商品を購入しなければならなくなります。
実はそのことがトランプ大統領の狙いだったのです。関税によって価格が上がれば、中国から輸入するよりも、アメリカ国内の工場で製造した方が良いだろうとアメリカの各企業は考えるだろうと予想していました。
トランプ氏は大統領になる前は不動産王と呼ばれる実業家でした。当時からアメリカの貿易赤字は悪であるという問題意識を持っていました。
この理由としては、「中国からの輸入が、アメリカ国内の工場労働者の仕事を奪っている」とトランプ氏は考えていたからです。
「貿易赤字は悪である」という考えのもと、トランプ氏は様々なものに関税をかけ始めました。
2018年 8月 半導体など約300品目に160億ドル相当に関税25%
このような追加関税によって、「中国は輸出を減らしたり、アメリカからの輸入を増やしたりするのではないか」とトランプ大統領は考えていました。しかし、中国側の反応はアメリカが期待していたのとは違ったものでした。
中国側も対抗したことが事態悪化の原因に
中国側はアメリカの追加関税を理不尽なものだとして、対抗する意向を表明しました。このことが事態悪化への原因になります。アメリカが行った中国への追加関税と同時期に中国もアメリカへ追加関税をかけます。
2018年 8月 自動車など約300品目、160億ドル相当に関税25%
品目こそは違うものの、時期、金額、税率について、アメリカが設定した分と同じだけ中国が対抗措置を打ち出してきたのです。
これに対してアメリカ側はさらなる追加関税をかけます。9月には2000億ドル相当に関税10%をかけることになります。
一方、中国も9月に液化天然ガスなど5200品目に600億ドル相当に関税5%or10%の関税をかけました。こうして自体は泥沼化していきます。
関税の掛け合いによってアメリカでは中国からの輸入品のほぼ半分、中国ではアメリカからの輸入品のおよそ7割に関税上乗せが実施されることになってしまったのです。
一時休戦したものの米中貿易戦争は続くことに
さすがにそろそろアクセルを緩めないとお互いの国に悪影響を及ぼすと感じ始めたのでしょう。2018年の年末に行われたG20でトランプ大統領と習近平国家主席の直接対話で休戦の話題が持ち出されました。
その後、貿易担当の閣僚が議論を続けます。しかし、5月のワシントンでの交渉がうまくいかずに、両国は決裂してしまいました。
そして米中貿易戦争は激化していきます。アメリカは交渉中に、2000億ドル相当の関税を10%から25%に引き上げることを決定。それに対して中国は600億ドル相当にかけていた関税を最大で25%まで引き上げることを決定しました。
さらに2019年、事態は深刻化します。8月5日、人民元の対ドルレートが7元台まで下落したことを受け、中国に対して為替操作国の認定を行いました。
さらに関税の掛け合いは続きます。2019年9月にはさらなる関税を打ち出します。アメリカは約1200億ドル相当の対象金額に対して15%、中国は750億ドル相当の対象金額に対して最大で10%の金額の関税をかけます。
為替操作国の認定は解除され、問題解決に向けた動きは見られています。しかし、関税自体は現在も有効のままで、解決まで時間を要す展開となっています。
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