消費者物価指数は、その国の経済状況を如実に表す指標です。物価上昇は景気の改善や金融政策の方針変更などに影響を与えるため、トレーダーであれば必ずチェックしておきたい数値になります。特に値動きの激しい通貨であるポンドの変動に耐えられるよう、経済指標の把握は重要になってきます。
この記事では世界経済でも重要性の高い英国の消費者物価指数について説明したうえ、2月19日に発表される数値の結果について書いていきます。
Contents
英国の消費者物価指数とは?

消費者物価指数は、世界各国で毎月発表されている経済指標です。モノやサービスの物価変動を示しており、インフレ(インフレーション)率の予測等に活用することができます。経済の発展には適度なインフレが必要ですので、消費者物価指数を知ることができればその国の景気の傾向も把握することができます。
英国・消費者物価指数の概要
消費者物価指数はCPI(Consumer Price Index)と略され、モノ(食料品など)やサービス(教育や医療など)を消費者が購入する際の物価の変動を示す指数で物価が上昇傾向であれば数値が高くなります。
したがって、消費者物価指数ではその国がインフレ(物価上昇)傾向にあるか、デフレ(物価下落)傾向にあるかを知ることができます。
英国国家統計局(ONS)が毎月15日ごろに発表しており、前月比と前年同月比が示されます。英国経済が世界経済におよぼす影響は大きいため、注目するべき指標のひとつといえます。
英国の消費者物価指数の概要
発表元 | 英国国家統計局(ONS) |
発表日 | 毎月15日前後 |
発表時間
(日本時間) |
夏時間:午後5時30分
冬時間:午後6時30分 |
発表内容 | 消費者がモノやサービスを購入する際の、物価の変化を表す指数 |
対象 | 前月比と前年同月比 |
消費者物価指数と関連のある指数
消費者物価指数に関連のある指数には、生産者物価指数(PPI)があります。消費者物価指数は、消費者が購入するモノやサービスの物価変動を表していますが、生産者物価指数は商品が製造業者(販売業者)から出荷される時点での価格を示しています。
消費者物価指数ほどの重要性はないとされていますが、サプライズが発生した際は為替相場に影響を与えるため一定の注意を払う必要があります。
英国・消費者物価指数と原油価格との関係
消費者物価指数は、原油価格とも関係性があります。原油価格が変動すると、ガソリンや灯油など原油を原材料とするエネルギー関連の商品価格にも影響を与えるためです。
一般的に、原油価格の上昇には消費者物価指数を押し上げる効果があり、逆に、原油価格が下落すると消費者物価指数の伸びが抑制される傾向があると言われています。。
なぜ消費者物価指数が注目されるのか
前述のとおり消費者物価指数はインフレ度合いを表している数値です。国の中央銀銀行は、インフレがすすみ過ぎているようであれば金利を上げて物価上昇を抑えようとします。逆にデフレの状態であれば金利を下げようとします。
また経済が発展するための条件のひとつに、「適度なインフレ」があげられるため、消費者物価指数の上昇具合を見ると、その国の景気をある程度把握することができます。
金利は為替相場にも直接的な影響を与えるため、金利の動向を予測することができる消費者物価指数はトレーダーにとっては見逃せない指数となります。
1月分(2月19日発表)の予想値

この項目では、2月19日に発表される、2020年1月分の消費者物価指数の予想値を示したうえ、過去の結果を振り返ります。
予想値は「-0.4%」
1月分の予想値は前月比が「-0.4%」、前年同月比が「1.6%」です。前月比では、2019年10月分以来のマイナス予想となりました。
過去の予想値と結果、為替の動き
前回(2019年12月分・発表日は2020年1月15日)の発表では、前月比・前年同月比ともに、結果値が予想値を0.2%下回りました。その結果為替相場では、下のチャートのとおりポンド売りが加速して大きく通貨安になりました。
2020年1月15日のポンド円チャート(赤丸部分が発表の瞬間)
2019年1月~2020年1月の英国・消費者物価指数の推移(単位:%)
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | ||
前月比 | 予想値 | -0.7 | 0.5 | 0.3 | 0.7 | 0.3 | 0.0 |
前月比 | 結果値 | -0.8 | 0.5 | 0.2 | 0.6 | 0.3 | 0.0 |
前年同月比 | 予想値 | 1.9 | 1.8 | 2.0 | 2.2 | 2.0 | 2.0 |
前年同月比 | 結果値 | 1.8 | 1.9 | 1.9 | 2.1 | 2.0 | 2.0 |
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 2020年
1月 |
|||
前月比 | 予想値 | -0.1 | 0.5 | 0.2 | -0.1 | 0.2 | 0.2 | -0.4 | |
前月比 | 結果値 | 0.0 | 0.4 | 0.1 | -0.2 | 0.2 | 0.0 | ? | |
前年
同月比 |
予想値 | 1.9 | 1.9 | 1.8 | 1.6 | 1.4 | 1.5 | 1.6 | |
前年
同月比 |
結果値 | 2.1 | 1.7 | 1.7 | 1.5 | 1.5 | 1.3 | ? |
消費者物価指数の結果と為替への影響は?

今回発表される予定の消費者物価指数は、話題となっているEU離脱や新型コロナウイルスの影響などもあり、予想値と同程度もしくは下回る可能性があります。
EU離脱(ブレグジット)の影響は?
EU離脱の前日である1月30日、英国の中央銀行であるイングランド銀行(BOE)は政策金利を0.75%に据え置くこととしました。離脱後の情勢を見極めてから、改めて判断するようです。しばらくの間は政策金利の利下げは行われない見込みであるため、金利安に起因する通貨安の可能性は低いと思われます。
その他の影響は?
日本国内でも流行の兆しを見せている新型コロナウイルスの拡大については、BOEのカーニー総裁が「警戒を続ける必要がある」と述べています。また、英国の首都ロンドンでは、初めて新型コロナウイルス感染者が出たこともあり、政府は国内のリスクレベルを「低い」から「中程度」に引き上げています。
また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、原油価格が下落しています。下の表は、欧州の原油指標である北海ブレント原油の価格推移です。前述したとおり、原油価格の下落は消費者物価指数の伸びを抑制する効果があるため、この価格下落の影響も懸念されます。
北海ブレント原油の指標
引用元:https://www.ifcmarkets.com/ja/market-data/commodities-prices/brent
為替への影響は?
経済指標全般にいえることですが、予想値と結果値の差が大きいほど為替相場へのインパクトは大きくなります。今回の予想値は-0.4%となっていますが、この数値に近い結果が出た場合はポンドに対する影響は小さくなるのが一般的です。
予想値より結果値が高かった(良かった)場合は、物価が上昇しているということなので景気が上向いていると判断されます。その場合はポンド買いが加速し、通貨高となる傾向があります。
逆に予想値より結果値が低かった(悪かった)場合は景気が減退しているとみなされ、ポンド売りの材料となります。したがって、通貨安になる可能性があります。
今回の消費者物価指数の発表では政策金利の据え置きは決まっているものの、上記のEU離脱や新型コロナウイルスのリスクが不透明であること、予想値がマイナスとなっていることから、予想値と同程度、もしくは下回る可能性も考慮していく必要があるでしょう。
まとめ
この記事をまとめると、以下のようになります。
- 消費者物価指数はモノやサービスの物価変動を表す。
- 数値が高ければインフレ(物価高)となり、景気は上向きと判断される。
- 予想値と結果値の差が大きいほど為替相場に与える影響も大きい
- 今回の発表では予想値と同等or下回る可能性あり?
消費者物価指数を理解し、トレーダーの皆さんは有利な取引を行いましょう。1月分の発表は、2月19日午後6時30分です。
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