中東の複雑怪奇な内戦事情とは?今後はトルコに注目!

先月トルコとシリア間で大規模な軍事衝突がシリアのイドリブ県で起こっています。

イドリブ県はシリアの北西部に位置しますが、シリアのアサド政権側が反政府軍の最後の砦であるイドリブ県に追い込んでまさに叩き潰そうとしていた矢先でした。

このイドリブでの内戦激化によって100万人に及ぶ新たなシリア難民が生まれ、彼らはシリアからトルコ側に流れ込んでいったのですが、トルコはすでに350万人に及ぶシリア難民を受け入れています。そのシリア難民の最終目標はヨーロッパ各国ですが、ヨーロッパとトルコの協定でトルコはこのシリア難民を国内に滞在させています。

この機に及んで、トルコ側がシリアに越境してまでの軍事行動を起こしたのはなぜか?その目的はクルド人を叩くことです。

「クルド人?」いったい何がシリアで起こっているのでしょうか?トルコはなぜそのクルド人をたたこうとしているのか?

世界で中東ほど複雑怪奇な地域はありません。

日本から遠いだけでなく、なじみのない地域ですが、日本が輸入している88%以上の石油は中東から来ています。

地政学的になにが起こっているのかを知っておくことは非常に重要です。

中東の内戦はかなり複雑!

中東では、たとえば「内戦」一つをとってみても、いつも2つの勢力が戦っているというような単純な形ではありません。

時には3つ巴、またある時は4つ巴になったりしています。それでも複雑そうに聞こえますが、中東には石油利権や地政学上の利害がからんでいて、必ず大国がバックにいます。

それだけでもわかりにくいですが、大国とサポートを受けるグループあるいは国家(=先導されるグループ、国家)が片方の大国に鞍替えしたり、あるいは鞍替えをほのめかして外交交渉を有利に進めたりと、わけがわからない状態になっているのが常です。ということで、変化の激しい中東の国々は厳しい状況におかれることが多く、そこに住む人々にとっては過酷で大変な境遇がいつなん時襲ってくるか判りません。

シリアにおける内戦とは?

さて、シリアですが、あまりなじみがありませんし、報道されることはまれなので、基礎的な情報から話を進めていきたいと思います。シリアという国がどこにあるかというと、中東の地図を見るとトルコの南側、南西にイスラエル、西側は先日ゴーン元日産会長が逃げたレバノン、南はヨルダン、東側はイラクという国々に囲まれています。

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(引用元:Google マップ)

シリアで2011年から続いている内戦はすでに9年経過していますが近々内戦が終了する可能性が出てきていました。

基本的には長い間独裁者であったアサド(父)がなくなった後アサド(息子)が引き継いでいましたが、2010年秋に起こった「アラブの春」運動に刺激されたアンチ政権派による(最初は民主的な)デモが発端になり、そのうちアンチ派が自由シリア軍を結成して武器を持つようになってアサド政権との対立が戦闘状態に入り今に至っています。

シリアは伝統的に親ロシア国で軍事的にはロシアの武器が供与され、ロシア軍が直接駐留しているようです。他の親ロシアの中東諸国といえば大国イランがあります。イランはペルシャ人の国ですが、ほかの大部分の中東諸国といえばアラブ人です。

ついでに触れておくと非アラブあと2つ、ひとつがイスラエルでユダヤ人の国になっています(ただ、もともと居住していたパレスチナのアラブ人も大勢イスラエルに居住しています。)また、トルコ人のトルコも非アラブ国です。

9年前に反アサド政権派を支援したのが米国です。その他の支援国にトルコ・サウジアラビア・カタールなども。

この3か国も米国寄りだったのですが、今でも完全に米国寄りはサウジアラビアだけでしょうか?

米国としては、自由シリア軍ががんばってもともとロシアよりであったシリアを米国寄りの新たな国が出来上がれば地政学上大きなメリットだからです。ロシアは当然それを嫌います。

中東各国で起こる戦争、内戦は歴史的に大国の代理戦争の場でもあるのです。

いずれにせよ2つの勢力が内戦を繰り広げて3年ほど経過したころ登場したのが「過激派組織IS」。ISはイラクから発祥、2014年には内戦状態になっているシリアに目をつけ、攻め入り一時は日本の総面積の8割にも及ぶ地域にまで勢力を増したようです。

ISの、蛮行、歴史建造物の破壊行動、残忍な振る舞い、湯川遥菜氏、後藤健二氏を無残に殺害した過激派集団の振る舞いなどが度が過ぎていたため、米国とロシアの協議でアサド派と反アサド派は一時休戦、ISの掃討に向かいます。この掃討に協力したのがこの地域に住む「国家を持たない」クルド人です。世界最大(3000万人以上)の国家持たないクルド人はシリア、トルコ、イラクにまたがって居住しています。

米国は(当時はオバマ政権でしたが)ISを倒してくれればシリア国内にクルド自治権を認めると約束したと伝わっています。クルド戦闘員の助けを借りて、米国、ロシア、アサド派、アンチアサド派が共同してIS退治を始めます。

クルドの夢は自分たちの国をつくることです。そんなモチベーションの高いクルド人の活躍でISはほぼ制圧されます。

ただ、その約束は守られず、米国がシリアからの撤退を決めます。クルドのクルド人はそのままシリアに居続けることを選び、そこに自分の国家建設を助けてくれる側につこうということで、これまでは米国を通して親米国の反アサド派側についていましたが、この機にアサド政権側(=ロシア側)に鞍替えします。

そのクルドを攻撃しようと越境してきたトルコ軍は結果的にロシア軍とアサド政権と戦うことになってしまったのです。

トルコが台風の目になる!?

トルコはNATO(北大西洋条約機構)に加盟しておりNATOの仮想敵国であるロシアに攻撃されているのでNATO諸国の集団的自衛権の履行を求めましたが、NATOはシリア国内の軍事行動は集団的自衛権の対象外として受け入れていません。

ただ、トルコは同盟国なので、欧米ともトルコの判断を支持せざるを得ないのでしょう。

米国のトランプ大統領はもはや中東での(石油)利権を守る必要がそれほどなくなったので、中東で戦争をして米軍人の犠牲者が出ることは望んでいないようです。2016年の選挙公約通り駐留米軍をシリアから撤退させたのです。これで、これまで経済的にまた武器供与でサポートしてきたシリア反政府軍が弱体化して、ロシアにシリアをとられても仕方ないと覚悟したのかもしれません。

いや、まだクルドを味方にしようとしているのかもしれません。ロシアに鞍替えしたクルドが、ロシアと政権側についていてもシリア国内で自治区などもらえるはずがありません。そう考えれば、うまくクルドを再び使えば、アサド政権を倒せるかもしれない、と考えているのかもしれません。

ただ、状況はさらに複雑になってしまいました。それがトルコのシリア国内での軍事介入です。将来的にクルドを味方にしたい米国は、ここでトルコにクルド人を叩いて欲しくないのです。

トルコは最近米国との同盟関係があるにもかかわらず、ロシアから地対空ミサイルを購入したりしたため、米国は米国の戦闘機販売を保留し、経済制裁まで行うようになっています。このぎくしゃくした関係の中、トルコに100万人近い難民が入ってくることになりました。

トルコはどうするのでしょうか?その気になればその新たな難民をヨーロッパに流入させることができるトルコの次の一手は?

今後の中東ではトルコが台風の目になりそうです。

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著者プロフィール

ウィンインベストジャパン( https://win-invest.co.jp/ ) 齊藤トモラニ 老舗FXスクール代表。

FX会社主催のセミナー講師としても活躍する。

著書に『簡単サインで「安全地帯」を狙うFXデイトレード』 ロンドンfxの松崎美子さんと一緒にYouTube「fxの流儀」を配信中 <FXの流儀youtubeチャンネル> https://www.youtube.com/channel/UC30w5H2MGSs6wP1YFjPeXBg

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