原油価格暴落の理由とは?株価急落との関係を解説

今週月曜日WTI原油価格(ウェストテキサス・インターミーディーエイト)が24.5%ダウンと1991年の湾岸戦争の時の下げ33%ダウンに次ぐ大きな下げとなりました。もっとも前日の高値と昨日の安値で計算すると実に41%の下げとこちらは史上最も大きな下げの1日になります。ヨーロッパのベンチマークになっているブレント原油も36.44ドルと21%の急落となりました。

原油価格の暴落で、新型コロナウイルスの影響ですでに大幅に下がってきていた株価の下げにさらに拍車がかかってしまったようです。

この下げの背景は、いったいなんだったのでしょうか?

それはOPECと非OPECが決裂してしまったことによるものです。

原油輸出国には2つのカルテル団体があります。

一つが1960年に創設されたOPEC(石油輸出国機構)といわれる伝統的な石油輸出国グループで、サウジアラビアなどのアラブ産油国が中心の13カ国からなるグループ。それからOPECに加盟していないが、安定的な価格を望むもう一つのグループで米国や英国やカナダなどの自由主義国を除く産油国グループ。それを非OPECとよんでいます。

ロシア、メキシコなど10か国が入っています。この2つを合わせてOPEC+(プラス)とよばれています。

まず先週2月5日(木)に行ったOPEC総会で今回OPEC+として150万バレル減産するという案で合意されました。

2018年比OPEC+トータルですでに170万バレルの減産ということで生産量の調整を行って来ているものを、さらに150万バレル減産するというアイデアでした。新型コロナウイルスの世界経済に及ぼす影響で原油需要が下がるので、そのためのPKOとして減産について話し合った結果でした。

ところで、OPEC+は20数か国の緩い協定ですので、割り当てられた減産枠の遵守率には大きな差があります。

OPECプラス全体ではすでに減産率123%と必要以上に減産中なのですが、OPECプラスのメンバー間ではまだ減産遵守率が少ない国々もあります。特にネックになっているのがロシア。ロシアは協調減産には消極的で、減産率はまだ78%と悪いです。もともとOPEC加盟国のリビアとイランについては政治的に輸出ができない状況がつづいているために減産の順守はしなくてよいことになっています。

OPECの歴史をみると、もともと各国の利害がからむので、抜け駆け、騙し合いは当たり前のグループでした。

ということで、生産枠はあってないようなものですが、今年1~2月のWTIとブレント原油の平均価格は、それぞれ54.10ドルと58.48ドルでした。

一部の国を除いて必要な価格に達していないレベルであったので、比較的まじめに生産枠を遵守していた国が多かったと思われます。ただ、ロシアなどは予算達成に必要な価格を上回っている状況なので、減産には消極的だったと言えます。

ただ、そういうグループがまれに一致団結する時もあります。それが唯一原油価格が十分低いときです。

最近の暴落でOPEC+はそんな気になり始めたところかもしれません。

OPEC+会合の話に戻りますが、上記のような状況下、ロシアがさらなる減産には反対であることはもともと伝えられていました、翌日2月6日(金)にOPECと非OPECとの会合では、ロシアに追加減産を迫りましたが、やはり前評判通りロシアは2020年第2四半期も現行の生産量で行きたいとのことで、OPEC案を拒否しました。

その理由としては、日経新聞3/7によるとロシアが予算編成の前提とする原油価格は北海ブレントで「年平均42.40ドル」とのことのようです。従ってここで減産する必要はなし、というのがプーチン大統領のアドバイスだったとか。

ちなみに、先週(月~木)のブレント原油の価格レベルは48~53ドル/バレルでしたが、金曜日のOPEC+の決裂が伝わったところで、ブレント原油は時間外で45.98ドルまで売られて最安値で引けました。

その一方、サウジの20年予算の前提はいろいろと試算がある(最大のものはIMFの資産83.60ドル)のではっきりとはわかりませんが、最低でも1バレル60ドル程度と推計されています。

ブレント原油の1~2月の平均価格は58.48ドル(WTIは54.10ドル)ですからプーチン氏の言う42.40ドルを大きく上まっています。一方、サウジアラビアにとっては少しショートしています。

両国間のこのギャップではネゴになりませんね。

ただ、時間がかかればかかるほど、ARAMCOの上場などの切り札もありサウジの立場のほうが強いかもしれません。

さて、ロシアの減産拒否に怒ったサウジアラビアは、「そうであればサウジは増産する」と宣言し、現在の970万バレルから生産量を4月にはこれまでの最大生産量を超える1230万バレルに増産する(備蓄分の取り崩しも含めて)とコメント。

それをきっかけに原油価格が暴落することになったのです。この状況は産油国にとっては破滅的です。

ロシアのノバック石油大臣はロシアの増産の可能性に言及するも、本日サウジアラビアと協調する可能性に触れ原油価格は若干戻していますが、今週月曜日の下げの半分程度の戻しにしかなっていません。

サウジアラビアのこの血を出してまでの増産の目的は?

表向きはロシアに減産を飲ませるためであることは疑いの余地はありませんが、両国の本音は増加し続けている米国のシェールオイルの採算以下に価格を下げてしまってシェアを取り戻すことにほかなりません。サウジは米国の同盟国であり、そんなことは口が裂けても公言できませんが、本音はそこにあります。

さて、原油価格はどこまで下がりうるのでしょうか?1983年にWTIが1989年にそれぞれ原油マーケットがそれぞれニューヨークとロンドンの取引所で取引が始まって以来の最安値はブレントが1995年の1バレル15.41ドル直近では2016年の29.31ドル。一方WTIは1986年の9.75ドル、直近では2016年の26.05ドルです。

我慢比べですが、平均値で考えれば予算編成のための最低価格以下になるにはまだ時間はあります。両国の意思は固いかもしれません。

米国のシェールオイル生産を止める!

米国のシェールオイルのコストについては様々な油井があるので、一概には言えませんが専門家に聞いたところでは、WTI価格で40ドルくらいから60ドルくらいだろうと言われています。ブレント原油とWTI原油の直近のスプレッドはおおよそ4~5ドル程度なので、ブレントに置き換えれば45~65ドルと考えられます。

週一回発表されるにベイカーヒューズ社の全米リグ稼働数の推移によると昨年の1月ころ(WTI原油価格が70ドル以上)のリグ数から最近では20%ほど減っています。価格が下げればこの数はさらに下がります。

さて、シェールオイル生産者の利益が出るかどうかは言うまでもなく原油価格次第ですが、原油価格は安定的とはいかないので、かなりNYMEX(ニューヨーク商品取引所)のWTI原油でヘッジを積極的に行っているものの、大手以外資金繰りの問題をいつも抱えていると聞きます。そのためにハイイールド債を発行して必要資金を得ています

それ故価格が下がることが死活問題

それをサウジアラビアもロシアもよく知っているはずです。

サウジアラビアはシェアをとるために「増産して価格を下げシェアをとる」戦略を常々もっているように思われる節があるようでした。

が、これまでは実行してきませんでした。今回のような最悪の時期に減産したところで、新型コロナウイルスの影響で石油需要はたいして伸びない、そのため、シェアをとる大作戦に出た可能性もあるかもしれません。

この両産油国の大ばくちの続く期間が長引けば長引くほど世界経済へのダメージは大きそうです(日本にとってはメリットかもしれませんが)。また心配なのは米国のシェールオイルカンパニーのハイイールド社債がデフォルトとなり、それが多く含まれるCLO(ローン担保証券)が焦げ付く場合には、それを大量に保持している日本の銀行、ファンドに直接的な影響がでてくることがあり、それが気がかりではあります。

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著者プロフィール

ウィンインベストジャパン( https://win-invest.co.jp/ ) 齊藤トモラニ 老舗FXスクール代表。 FX会社主催のセミナー講師としても活躍する。 著書に『簡単サインで「安全地帯」を狙うFXデイトレード』 ロンドンfxの松崎美子さんと一緒にYouTube「fxの流儀」を配信中 <FXの流儀youtubeチャンネル> https://www.youtube.com/channel/UC30w5H2MGSs6wP1YFjPeXBg

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