世界の株式と多くの通貨が下落しています。
言うまでもなく典型的なリスクオフ(=リスクを取りたくない)マーケットです。
一般的にはリスクオフマーケットの時は通常金が買われ、通貨で言えばドルと円とスイスフランが買われ、米国債などの安全資産にお金が流れます。金利は下がります。株は売られます。
しかし、今回のマーケットは全く違う様相を呈しています。
ドルは買われていますが、円も含めた多通貨はすべて売られています。それどころか、米国債も金も売られています。
なぜでしょうか?
強烈なドル不足によるドル高!
現在強烈なドル不足になっており、ドル高が進んでいるのがその理由です。
ドル建ての債務を返そうとしても手当てができない状態で返せなければデフォルトになってしまいます。
金融取引ではドル建てのマージンコールがかかっている状態になっています。
早急にドルキャッシュを手当てできなければ強制決済を余儀なくされます。
この背景には世界中の株価や金融派生商品の下落によって、必要マージン(証拠金)が通常より大きくなっているので、マージンコールがかかり、ドルキャッシュが直ちに必要とされる状況が世界的レベルで続いていることがあります。
また途上国からドル資金が逃げ出して、ドル建て債務の返済がままならない状態です。
世界中のマーケットは、先物、ヘッジファンド、為替、その他デリバティブと呼ばれる金融派生商品はほぼすべてレバレッジがかかっていますので、今回の世界中の株価のような世界的な巻き戻しになると、株や株価指数をレバレッジを使って買い持ちしている場合は損が自己資産以上に膨らむ可能性が高く、それを避けるために証拠金(マージン)が設定されています。
思わぬネガティブな値動きが起こる可能性を考慮してあらかじめ設定されたマージンが不足すると強制決済する形になっています。
デリバティブというのは株、株価指数、債券、金利、為替、(金、原油などの)コモディティ価格を基準に価値が決まる金融商品の総称です。
原始的な商品から派生した商品として、日本語では金融派生商品と呼ばれますが、英語ではデリバティブと呼ばれます。
これには通常レバレッジという機能がついて取引されます。
レバレッジとは取引効果を増やすために、自己資産に加え他人の資産を借りてトレードする状態を言いますが、その分利益も損も膨らみます。
取引形態としては、次のとおりです。
- 先物取引
- オプション取引
- スワップ取引
- フォワード取引など
デリバティブには、金融商品取引所などの公開市場を介さない相対(あいたい)での取引(店頭デリバティブ)と、公開市場を介する取引(上場デリバティブ)の2種類がありますが、取引規模としては上場デリバティブより店頭デリバティブの方が圧倒的に大きいのです。
従ってどのくらいのリスクが世界経済にのしかかってきているのかわかりません。
危機に陥ったときにいったいどのくらいのリスクなのかわからないのです。
ヘッジファンドなどの大口トレーダーが公開市場を通さない店頭デリバティブ取引を行う場合は、お客さまから預かった自己資産に加え銀行から調達する資金を使ってポジションを取りますので、その借金部分がレバレッジということになります。
直近1ヶ月の金融市場の振り返り
さて、最近1か月くらいの金融市場で起こったことを顧みてみましょう。
新型コロナウイルス感染者が欧米でも拡がり始めたころ、実体経済への影響を恐れ、世界の投資家たちは株を売り、債券買い金買いに走りました。円も買われました。
これにより、今年の初めに1.8%くらいあった米国10年債の利回りは3/9には0.318%まで急落しました。
利回りが下がったということは米国債に買いが殺到して米国債が急騰したということになります。
金も1,450ドル台から3/9に1オンスあたり最高値である1,702ドルまで上昇してきていました。
その間米国ダウは2月の史上最高値29,568ドルの高値から3/9の23,851ドルまで20%下がっていました。
2002年~2003年の時のSARSの場合は最大でも18%の下げでしたので、そろそろ株の下落も収まるという楽観論がありました。
が、そんな楽観論は長くは続きませんでした。
新しい危機が生まれたのです。
OPEC+プラスが初めて決裂して原油価格が3/9に大暴落し始めたのです。
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このタイミングで、世界中でドル需要が一気に増すことになりました。
金は3/9から10日余りで1,450ドルへと250ドル(14.7%)も下がっています。
ドルの現金を造るためです。
またリスクフリーの米国債(たとえば10年物も)も売られて3/9の史上最高値0.318%から、1.3%の利回りへとわずか10日の間に4倍も上がって来ています。
債券としては暴落したことになります。
ということで、ドルが買われてドル円は上昇、他のドルストレートは急落しつづけています。
ドルの強さを表すドルインデックスは3/9からたった10日間で8.7%も急騰していて、トランプ大統領の就任式を目前にした2017年1月3日につけた103.82に急速に近づいてきています。
この3/9は急速に欧米でコロナウイルスの感染者が増え始めているタイミングでもあり、またOPEC+の決裂で原油価格が大暴落を始めたその日でした。
米国ダウはその日からさらに25%も暴落しています。
世界の中央銀行は今週月曜日に米、日、欧、英、スイス、加が協調してドルを供給することを決定しましたが、その背景にはこんな事情がありました。
このような協調政策がとられていなかったら、今ころドル不足で韓国、中国などのドル建て債務の多い国やもともと対外資産の少ないトルコなどのG20の国々でも通貨危機が起こっていたことでしょう。
ただし、今日現在でもドル不足が解消されたのかどうかは予断を許しません。
韓国ウォンが最近急落しています。
トルコリラ、ロシアのルーブル(こちらは原油価格の暴落が原因)なども急落し続けています。
少し前に中東のレバノンがデフォルトを宣言しましたが、韓国、トルコ当たりがデフォルトになる可能性は最近高くなってきていると思います。
新型コロナウイルスの影響で経済活動の内「ヒト」ー「モノ」に大きなブレーキがかかっていますが、今回は比較的健全と思われていた「カネ」に信用収縮などの問題を起こさせてはいけません。
そんなことにでもなれば、リーマンショックをはるかに越える世界恐慌になってしまいます。
「カネ」だけは何とか各国中央銀行と各国政府の協調体制で乗り切れることを切に願っています。
ドル不足の終焉は金価格の上がり始め?
ところで、ドル不足はいつまで続くのでしょうか??
ひとつのヒントは無理やり押し下げられた金価格が上がり始めるときと言えるかもしれません。
その時は株も上がり始めることになり、金利が下げ始めることになるのかと思います。
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著者プロフィール

FX会社主催のセミナー講師としても活躍する。
著書に『簡単サインで「安全地帯」を狙うFXデイトレード』
ロンドンfxの松崎美子さんと一緒にYouTube「fxの流儀」を配信中
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