原油価格はまだ下がり続ける?サウジアラビア大増産戦略とは!?

原油価格はゼロになってしまうのか?

WTI原油価格(ウェストテキサス・インターミーディーエイト)は先週バレル19.27ドルという2001年以来の安値にまで下がっています。

WTI原油価格

出典:https://tradingeconomics.com/commodity/crude-oil

WTI原油がニューヨークマーカンタイル取引所に上場された1983年以来の最安値は1986年のバレル9.75ドルという気が遠くなるような安さでしたが、インフレを加味すると20ドル以下の原油価格はとてつもなく低い価格に聞こえます。

このサウジアラビアとロシアの価格戦争のタイミングで新型コロナウイルスのパンデミック化が起こってしまいました。すでにほとんどの国々で「ヒト」と「モノ」がストップしたまま、また北半球では春になって暖房油の消費はなくなります。外出が禁止されているので、ガソリン需要も激減しています。

サウジアラビア、ロシアはこのタイミングを逆利用したのでしょうか?両国、特にサウジアラビアの狙いは何なのでしょうか?

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米国では2018年にシェールオイルの生産量は1,400万バレルまで上昇してきていて、これではOPEC+としては減産すれば世界シェアを奪われるだけという危機感があったものと思われます。それ故、OPEC+の決裂となりました。

トランプ大統領は30日プーチン大統領と電話会談を行い、最近の原油情勢に関して、ロシアに原油の減産をするように要求した、と伝えられています。そこでのプーチン大統領の反応は報道されていませんが、プーチン氏のことですから、米国も減産したらどうかというくらいのカウンターを出したはずです。

たとえそういう会話がなされたとしても、サウジアラビアやロシアはともかく自由主義国の米国としてはシェールオイルカンパニーに減産しろとは言えないので、それにトランプ氏は反応できなかったはずです。

お互いに平行線で、会談後両首脳が「エネルギー市場の安定性」が重要との認識で一致したと発表したとありますが、外交辞令以上のものではありません。原油市場の状況について、両国のエネルギー相が協議するということのようでした。

昨日はロシアのノバック石油相と米国のブルイエットエネルギー長官の間で電話協議がなされた模様ですが、G20の他産油国間で減産について協議するという合意をしたということで、進展は見られません。

3国で協調減産合意があるとすれば、米国が両国に政治的圧力をかけるか、あるいはサウジアラビアとロシアが結託して米国のシェールオイルを経済的に破綻に持ち込むということしかありません。

後者の判断をサウジアラビアとロシアは決断したものと思われます。

サウジアラビアのムハンマド皇太子はトランプ大統領と直接会談したかどうかは伝わっていませんが、シェア取りの意思は固く、米国の減産要求は無視したようです。

FOXニュースのインタビューでトランプ大統領は、米シェールオイル企業については「消滅してほしくない」と強調したとのことです。

ロシアは3/6ウィーンでサウジアラビアから減産アイデアを提示されたにもかかわらず、ロシアとしては40ドルでもやっていけるとし、25ドルでも10年間は耐えられるとつっぱねたそうです。25ドルはロシアのブラフと思われますが…

日経新聞3/7によるとロシアが予算編成の前提とする原油価格は北海ブレントで「年平均42.40ドル」とのことでした。

従って、当時それ以上だった原油価格で推移していたので、3/6のOPEC+減産する必要はなし、というのがプーチン大統領のアドバイスであったとか。

ただ、直近ではプーチン大統領は軟化する言動をとり始めていると伝えられています。

その一方、サウジアラビアの20年予算の前提はいろいろと試算がある(最大のものはIMFの資産83.60ドル)のではっきりとはわかりませんが、サウジアラビア原油の生産コストはバレル2~7ドルと極めて低いと言われていることから、コストの高い米国のシェールオイルカンパニーからシェアを奪うためにこの戦略に出たと思われます。

ということで、OPEC+決裂からサウジアラビアとロシアの我慢比べが始まりました。

4/1からサウジアラビアは第一四半期の970万バレルから1230万バレルへの大増産を実際に行い始めたと伝えられています。サウジアラビアは本気のようです。

サウジアラビアはシェアをとるために「増産して価格を下げシェアをとる」戦略を1980年代から常々もっているように伝えられていましたが、これまでは実行してきませんでした。今回のような最悪の時期に減産したところで、新型コロナウイルスの影響で石油需要はたいして伸びない、逆に需要減となるので、シェアをとる大作戦に出た可能性もあるかもしれません。

それにしてもサウジアラビアは米国の要求を無視してこのままずっと大増産を続けられるのでしょうか?

湾岸戦争の時にサウジアラビアを助けたのが米軍を中心とする同盟軍でした。サダムフセインはもういなくなりましたが、サウジアラビアは、東にイラン、南にイエメンという敵国があります。

昨年9月にはイランがバックにいるイエメンのフーシ派のドローン攻撃でアラムコの石油基地が攻撃され、日糧500万バレルの損失をこうむりました。政治的、軍事的に米国のバックアップが必要なはずです。その米国を敵に回してしまってよいのでしょうか?

それにしてもサウジアラビアがトランプ大統領の要求をのまないと決断したことには驚きです。

米国に歯向かう力は今のサウジアラビアにはないからです。

あるいは、背景にイスラエルも含めた米国サウジ間でなんらかの合意でもあるのかもしれないと考えることも可能です。

あるいは、米国はイランの現政権を潰すために、その目的を成就するまでサウジアラビアの低価格戦略を当分の間良しとしたのでしょうか?

いや、イランについては経済制裁を続けているので、イランの原油輸出は限られています。その限られた輸出量の価格を下げるためだけに、また中東での新たな米国の戦略のために、シェールオイル業界を破産させるような大きな犠牲を払うほどのことはないと言えます。

ということは、サウジアラビアに違うバッカ―が出てきたと考えられなくもありません。これは筆者の想像でありますが、中国がもしかしたらバックにいるのかもしれません。

中国はイスラム教徒のウイグル人を弾圧しているのは公然の秘密になっています。イスラムの宗主国であるサウジアラビアがそれに対して何も言わないのはなぜでしょうか?

イエメンでサウジアラビアは中国の協力を得ています。

中東から足を洗おうとしている米国から中国に乗り換えようとしているのでしょうか?

あくまでも想像ではありますが・・・。

サウジアラビアの目標である米国のシェールオイル産業への影響はすでに表れ始めています。

昨日あるシェールオイルカンパニーがチャプター11(連邦破産法11条、日本の民事再生法)を申請したという話も伝わり始めています。Whiting Petroleumという中堅のシェールオイル・ガス掘削会社で第4四半期に石油換算で日糧123,000バレルを生産していた会社のようです。

このような動きは今後も続きそうです。

ロシアもさすがに根を上げ始めるかもしれません。

そうなればムハンマド皇太子の政治的立場はこれまでに増して強固なものになります。

とすれば、このサウジアラビアのイチかバチかの大増産戦略は長続きするかもしれません。

原油価格はゼロに向かってまっしぐらです。

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著者プロフィール

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ウィンインベストジャパン( https://win-invest.co.jp/ ) 齊藤トモラニ 老舗FXスクール代表。
FX会社主催のセミナー講師としても活躍する。
著書に『簡単サインで「安全地帯」を狙うFXデイトレード』
ロンドンfxの松崎美子さんと一緒にYouTube「fxの流儀」を配信中
<FXの流儀youtubeチャンネル> https://www.youtube.com/channel/UC30w5H2MGSs6wP1YFjPeXBg

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