原油先物価格が史上初のマイナス!コロナで需要減による投げ売りか

WTI原油価格 マイナス

米国のWTI原油(ウエスト・テキサス・インターミーディエイト)限月物が20日-37ドルと、通常ではありえない価格で引けました。物の値段がマイナスということは意味不明ですが、先物の世界で実際に起こってしまったのが20日のNYMEX(ニューヨーク商品取引所)で取引されている5月渡しのWTI原油価格でした。

WTI チャート

先物市場は将来の特定月に所有権を渡す契約の取引が行われている市場のことですが、世界の原油価格のベンチマークになっている原油の一つが米国のWTI原油です。

原油の需給は新型コロナ以来バランスが完全に崩れていました。最近OPECプラス(サウジアラビアとロシアがメインプレーヤー)は日量970万バレルの減産を決めましたが、米国のEIA(エネルギー省)の資産によれば減産幅は日量で1500万バレル必要ということでした。ただ、世界中のロックダウン(都市封鎖)で需要減はさらに大きく、日量2500~3500万バレル減っていると言われています。

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そこで、産油国は備蓄用タンクに原油を蓄えながら新型コロナが過ぎ去るのを待つ、また米国のシェールオイルが採算割れになって生産をストップするのを待つ方針に切り替えたのですが、現在の経済がほぼ完全にストップした原油マーケットでは実需だけでなく備蓄などの仮需を合算しても供給過剰状態には変わらず、20日のNYMEX先物市場ではロングがあぶりだされた形です。

WTI原油5月渡しは21日が納会(最終商い日)です。通常限月は最終日の4~5日前くらいから取引量が減り、16日にはすでに最も取引されているのは6月物になっていたところでした。

こんな状況で、21日までにどうしても売らなければならないバイヤーの投げ売りが始まり、昨晩の5月物の価格はバレル当たり-37.63ドル。「お金出すから持って行ってくれ!」という非現実的なことが起こってしまいました。
なぜマイナスでも売らねばならなかったのでしょうか?

さて、WTI先物市場はロングを残した買い手はNYMEXが指定するクッシングで引き取らねばなりません。

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クッシング:アメリカの原油先物市場NYMEXの原油の受け渡し場所

 

原油の実需のある石油精製会社であればそのままパイプライン経由で受け取ることはロングしたときに引き取りを予定した買いだったわけですが、ヘッジファンドや個人のトレーダーなどの投機買いの場合は全く事情は異なります。つまり、満了日までにオフセットする(売る)必要があります。誰かに引き取ってもらわねばなりません。

事件は20日にほぼ終わった可能性が高いですが、実はまだ、この異常事態は終わっていないかもしれません。
5月引き渡しWTI原油の納会(満了日)は第4週目の火曜日ですから、4月21日(火)が終了するまではなんでもありです。

さて、マイナス価格は当然ですが、一桁でも長期的に買い持ちも考えられると思うかもしれませんが、実はそれほど単純ではありません。20日のNYMEXのWTI原油の終値を比較してみましょう。

5月物が-37.63ドルでしたが、翌月ものつまり6月物、そのあと7月物、8月物はどうかというと、それぞれ20.43ドル、26.28ドル、28.51ドルと高くなっています。
さらに9月、10月、11月、12月はそれぞれ、29.84ドル、30.81ドル、31.66ドル、32.41ドルです。要するに将来の価格は高くなるとみているのです。

5月物 6月物 7月物 8月物 9月物 10月物 11月物 12月物
$-37.63 $20.43 $26.28 $28.51 $29.84 $30.81 $31.66 $32.41

こういう価格が高くなっている状態を先物ではコンタンゴ(contango)といいます。先物市場では通常このコンタンゴになります。ちなみに価格が将来安くなっていく状態をバックワーデーション(backwardation)といいます。

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コンタンゴ:将来になるほど価格が高くなる状態(貯蔵コストがかかるため通常の状態)
バックワーデーション:価格が将来安くなっていく状態(「異常な」状態)

 

なぜコンタンゴになるかというと、今の値段とたとえば3か月物の値段の価格差には原油で言えば、その貯蔵コストと購入資金の金利が追加コストになるからです。

したがって上記の5月物の-37.63ドルと6月物の20.43ドルの価格差は58.06ドルといえます。これが1か月分のコストということになるでしょう。

それが正当かどうかは市場の強弱で決まりますが、今回の異常なマイナス価格は特殊事情なので、通常はこんなコストにはなりません。

たとえば、半年後の連続月で計算してみると(11月物と12月物)とそれぞれ31.66ドルと32.41ドルでしたので、値差は75セントでした。これでイメージが湧いてきたかなと思います。

さて、20日にロングで失敗した投機家は完全に損切で終わったわけではなく、おそらくポジションを翌月ものあるいは翌々月ものにロールした可能性が高いです。つまり、20ドル台でロングです。

一方、シェールオイル生産者はショートポジションをロールしたと思います。コンタンゴが続いているので、将来価格が高いので生産者(ショートセラー)には有利です。この辺の価格レベルでは値ごろから長期ロングを考えたくと思いますが、短期で上昇しないと全くペイしない戦略になります。

そう考えると、長期的に原油を買うのは現物の金を保持するのとはわけが違うことがお分かりいただけたかなと思います。現物の原油はたとえミニマムの取引単位1000バレルでも現実的ではありません。1000バレル=159000リットル、(比重が0.86として)136トンもあります。家庭ではタダでも欲しくない量ですね。

長期の原油ロングをするタイミングは、コロナの終息、そうでなくともロックダウンが終了しそうなタイミング以降でしょう。その時はこの急激なコンタンゴがなだらかになる、あるいはバックワーデーションになり始めるときではないかと思います。

短期投機資金が現物に流入するとか将来的に原油がタイト化するような事象が起こってくる時と考えておくのがよいでしょう。

バックワーデーションになれば、期近ものが将来より高くなるわけですから、買い持ちコストが毎月下がって来るので、それこそ長期保有のタイミングといえます。

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著者プロフィール

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ウィンインベストジャパン( https://win-invest.co.jp/ ) 齊藤トモラニ 老舗FXスクール代表。 FX会社主催のセミナー講師としても活躍する。 著書に『簡単サインで「安全地帯」を狙うFXデイトレード』 ロンドンfxの松崎美子さんと一緒にYouTube「fxの流儀」を配信中 <FXの流儀youtubeチャンネル> https://www.youtube.com/channel/UC30w5H2MGSs6wP1YFjPeXBg

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