イギリスは2020年1月31日にそれまで加盟していたEU(欧州連合)を離脱しました。
EUではユーロという共通通貨が使われていますが、イギリスはEU加盟時にもユーロではなく独自通貨のポンドという通貨を採用しています。
そのポンドがある日を境に大暴落をするという出来事がありました。
今回はそのポンド危機(ブラックウェンズデー)が与えた為替や株価の影響とイギリスのその後について解説していきます。
- ポンド危機(ブラックウェンズデー)の背景や原因
- コロナショックとの違いや共通点
- ポンド危機(ブラックウェンズデー)によるイギリスの変化
- ポンド危機(ブラックウェンズデー)はなぜ起こったのかが理解できる
- ポンド危機(ブラックウェンズデー)が為替や株価にどのような影響を与えたのかが分かる
- コロナショックによる世界経済危機との相違点や共通点が分かる
- ポンド危機(ブラックウェンズデー)後のイギリスの変化や現在の様子について理解できる
Contents
ポンド危機(ブラックウェンズデー)とは!?
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ポンド危機とは別名ブラックウェンズデーとも呼ばれています。
1992年9月16日(水曜日)にイギリスの通貨であるポンドの為替レートが急落し、翌日に欧州為替相場メカニズムを離脱した一連の出来事を言います。
欧州為替相場メカニズムとはヨーロッパにおける為替相場の変動を抑制して、通貨の安定性を確保することを目的とした制度です。
急なポンド売りが継続しイギリスの中央銀行であるイングランド銀行は公定歩合を引き上げるなどの対策をしましたが、ポンドの強い下落は止められず欧州為替相場メカニズムを脱退することに決めたのです。
ポンド危機(ブラックウェンズデー)の主な要因
ポンド危機(ブラックウェンズデー)の主な要因としてドイツが大きく影響しています。
イギリスが欧州為替相場メカニズムに参加した1990年に東ドイツ、西ドイツに分断されていたドイツは統一をしました。
これによりドイツは好景気を迎えることになります。
そのころイギリス経済は大きく低迷していたため2つの国では政策金利に大きな差が出てしまったのです。

低迷した景気を回復させるため金利の利下げを行うイギリスと違い、ドイツはインフレの懸念から利上げを強めました。
ドイツの積極的な政策金利は欧州通貨だけでなく独自通貨を採用していたイギリスのポンドにも影響を与えたのです。
これによりポンドが割高だと感じた投資家たちが一気に売りに転じました。
これがブラックウェンズデーと呼ばれるポンド通貨危機につながった背景になります。
コロナショックとの違いや共通点
2020年4月現在、世界を騒がせている新型コロナウィルスとポンド危機(ブラックウェンズデー)の相違点と共通点は以下の通りです。
共通点:ポンド通貨の大暴落
コロナショックとの共通点はイギリスの通貨であるポンドの急な大暴落にあります。
ポンド危機(ブラックウェンズデー)でポンドは投資家たちの間で過大評価されているとの意識が強まり急激な下落をしていきました。
それと同じようにコロナショックはEU離脱後によるイギリス経済回復の見込みがあったにも関わらず、強い懸念を危惧した投資家たちに売られて急な下落をしていったのです。
(2020年1月~4月 GBP/USD 日足チャート)
EU離脱による大きな期待からコロナショックによる急激なポンドの下落は投資家やイギリス国民の不安な心情が大きく表れています。
双方ともに過去に例のない下げ幅を記録することになりました。
相違点:ポンド危機は日本株にほとんど影響を与えなかった
コロナショックによる株価の下落は全世界で起こっています。
日本の株価も例外ではありません。
世界中の経済が衰退し株価が大きな下落を続けている現状です。
しかし、このポンド危機(ブラックウェンズデー)は日本の株価にほとんど影響を与えなかったといわれています。

ポンド危機(ブラックウェンズデー)の起こった1992年には日本がバブル崩壊を起こした後のことになります。
上向きだった日本経済が後退していく過程であったため、このポンド危機(ブラックウェンズデー)は日本の株価にほとんど影響を与えることがなかったのです。
ポンド危機(ブラックウェンズデー)が与えた影響と現在
ポンド危機(ブラックウェンズデー)はイギリス国内ではホワイトウェンズデーとも呼ばれています。
それは皮肉にも通貨危機を迎えた事により、イギリス経済が回復したことからこのようにいわれているのです。
ポンド危機(ブラックウェンズデー)が与えた影響と現在について下記にて解説していきます。
金利を自由に下げられるようになり経済が好転した
(引用元:現行通貨換算機能システム GBP/USD 月足チャート)
欧州為替相場メカニズムを脱退したイギリスはその後、金利を自由に下げられる変動相場制を採用しました。
他国を気にすることなく独自の金融政策をできることになり、それまで不況の続いていたイギリス経済は一転して経済の好転をすることになります。
欧州通貨の動きに左右されなくなったことから、失業率の改善、インフレ率の安定化を打ち出した政策を積極的に行ったことが要因と見られています。

GDP(国内総生産)も1980年から安定的に上昇を続ける結果となりました。
通商交渉による対ユーロへの強み
イギリスはEU加盟時も欧州共通通貨であるユーロを採用せず、ポンドという独自通貨を採用しています。
ポンド危機を迎えた後の経済好転により通商交渉に強気の姿勢をとれるようになりました。
EU諸国にはイタリアやドイツのような経済大国もあればギリシャのように貧しい国もあります。
このようなEU内での経済格差が大きくなる中、同じヨーロッパに位置するイギリスは経済的に成功を納めている国なのでユーロに対して強気の交渉が可能となっているのです。
2020年1月31日にEUを離脱した事から、さらに自由な交渉が可能となったのでヨーロッパ全土で経済が衰退してもポンドは独り勝ちする可能性が高くなっている現状です。
まとめ

ポンド危機(ブラックウェンズデー)と呼ばれる歴史的なポンドの下落は、結果的にイギリスを経済大国へと導きました。
さらにEU加盟国を離脱したことによりイギリスはより自由な外交をすることができるようになったのです。
今回のコロナウィルス感染拡大によりユーロ圏内を自由に行き来できることがヨーロッパでの感染拡大に繋がったとの見方もあります。
ポンドという通貨は欧州経済に引っ張られることがなくなったので、経済的にも国際的にも自由な国家になったといえるのかもしれません。
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