絶対的利益を追求するヘッジファンドは、その手法によって5種類のカテゴリーに分けられます。
- グローバル・マクロ
- ロング/ショート戦略
- マーケット・ニュートラル戦略
- イベント・ドリブン戦略
- マネージド・フューチャーズ戦略
その分け方のベースになっているのが、その運用戦略や投資対象などです。
グローバル・マクロ
一番華やかでサイズの大きいポジションをとるのが、グローバル・マクロと呼ばれるヘッジファンドです。
ジョージ・ソロス、ポール・チューダー・ジョーンズ、ジュリアン・ロバートソンなどが代表的なマクロトレーダーです。
マクロ経済の動向を予測し、世界各国のあらゆる市場の方向性に投資して、大きなレバレッジを掛けて収益を狙います。
レバレッジをかける方法は顧客や自分の個人資産を担保にして銀行から何倍もの資金を借りて、その全体で大きなポジションをとっていきます。
世界で最初に誕生したヘッジファンドもグローバル・マクロだったといわれています。
グローバルマクロが一躍有名になったのは1992年のことでした。
英国ポンドを売り崩して英国の中央銀行であるイングランド銀行に勝った男といわれた「ジョージ・ソロス」が運営するソロスファンドも、典型的なグローバル・マクロとして知られています。
ジョージソロスは、英国ポンドの市場価格が、本来の価値よりも高く評価されすぎている、といった「市場の歪み」を狙って投資することで、ポンドを売り崩したのでした。
通貨以外に、株式や債券、商品先物など、あらゆるジャンルの金融商品が投資対象になります。
ロング/ショート戦略
次がロング/ショート戦略です。
相場の方向性を予測して利益を追求する「ディレクショナル(=方向をとらえる)型投資戦略」で、市場の方向性に投資するという戦略で、株式市場などで、将来的に値上がりが期待できる割安な銘柄をロング、値下がりが予想される割高な銘柄を空売りショートするという戦略で、ヘッジファンドでは最も一般的な投資スタイルかもしれません。
ショートセラーズと呼ばれるトレーダーもこのなかの一員と数えられます。
ショート専門のトレーダーで、株価が上昇している時は年率で数パーセントですが、負けていることもよくあります。
トレンドと反対のポジションをとるわけですから、うまくいかなくても当たり前です。
負けているのにヘッジファンド?!と驚く方もいらっしゃると思いますが、ショートセラーズは、複数のヘッジファンドのポートフォリオを組んでトータルで資産を管理するファンド・オブ・ファンドと呼ばれる巨大投資会社(投資銀行)などに徴用されることが多いです。
というのは、今回のようなコロナ危機のようなたまに来る暴落の時にはショートセラーズは強いからです。
他の手法はおそらく痛手を被っていることでしょう。
ショートセラーズは、他のヘッジファンドと相関がないことでポートフォリオのヘッジ機能を発揮するからです。
マーケット・ニュートラル戦略
一方向にポジションを取らないマーケット・ニュートラル戦略というヘッジファンドもあります。
ロングとショートを同程度に組み合わせることで、市場全体の価格変動に左右されない安定的な収益の確保を目指します。
どうやって儲けるのかというと、たとえば、本来あるべき価格よりも割安な銘柄を買い、逆に割高な銘柄を空売りします。
マーケットに起こるひずみを狙うわけです。
マーケットにあるひずみは長くは続かず、理論的には元に戻るわけですから、両者の価格が正常な価格に回帰した時点で収益を確保できる仕組みです。
1998年に破綻してしまったLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネージメント)という債権のマーケット・ニュートラル戦略のヘッジファンドがありました。
運用チームにマイロン・ショールズとロバート・マートンというノーベル経済学賞受賞者らを集め、高度な金融工学理論を駆使して、組成から数年は年40%という驚異的な成績を記録していました。
ウィキペデイアによれば、次のように言われています。
その運用方針は、流動性の高い債券がリスクに応じた価格差で取引されていない事に着目し、実力と比較して割安と判断される債券を大量に購入し、反対に割高と判断される債券を空売りするもの」「しかし取引債券のわずかな金利差から収益を得るために巨大なレバレッジをかけていた」
1994年に設立以来、毎年40%以上もの利益を上げていたのですから驚異的でしたが、1997年のアジア危機、それに次いで98年にロシアがデフォルトを宣言したことで、LTCMは一方のポジションが突如なくなってしまったわけですから、破綻に追い込まれてしまったのです。
結局LTCMから投資家に帰ってきたお金は10%だけだったらしいのですが、過去43年ですでに元本以上を稼いでいたので実質的な損は発生しなかったとある投資家から吐露されたことがありました。
イベント・ドリブン戦略
次に変わり種としてはイベント・ドリブン(Event Driven)という戦略もあります。
企業の合併・買収、株価指数の変更などの重要な出来事(これらをイベントと呼びます)が起きた際に、そのイベントによって生まれる収益を得る投資戦略です。
具体的には、企業のM&A、新規上場、経営破たんといった企業に起こり得る特殊な状況、あるいは株価指数採用銘柄の変更をターゲットにしています。
ただし、一口にイベントを狙って利益を目指すといっても、イベント・ドリブンには複数の戦略があります。
そのうちの最も有名なものが、ディストレスト(distressed)と呼ばれる戦略です。
経営危機に陥っている企業をターゲットに投資し、企業の経営を回復させて利益を回収する方法や、実際に破たん手続き中の企業のハイイールド債券や銀行ローンなどをターゲットに利益を確保する方法などがあります。
会社の株式を5~10%の株価価値で買い取って株価を上げることによりその鞘(さや)を抜いていった戦略です。
経営がうまくいってないと思われるソフトバンクグループに、エリオットマネージメントという「ハゲタカファンド」が最近2800億円という大口出資をしました。
エリオットは物言う株主で、ソフトバンクの改革をしようとしています。
先月、ソフトバンクG株が市場で下がった時にアリババ株の一部を売って資金を作り自社株買いを行いましたが、エリオットにそれを要求されたためと伝えられています。
また真意のほうはわかりませんが、ネット上ではエリオットはソフトバンクGが持っているアリババ株を狙っているとうわさされています。
マネージド・フューチャーズ戦略
最後にマネージド・フューチャーズ(Managed Futures)戦略があります。
このヘッジファンドは世界の先物取引所に上場されている先物(コモディティ、金利、株式指数)や為替といった流動性の高い市場を投資対象に、テクニカル指標や定量分析を駆使して、投資対象を分散して(最低5種類)ポートフォリオを組んで、システム売買を行う戦略です。
トレード手法は次のように様々です。
- トレンドフォロー
- カウンタートレンド
- 短期売買
上場先物や為替であれば、すでにレバレッジがかかっていますので、大きなレバレッジを掛けてわずかな値動きを収益に変える投資戦略でもあります。
現在ではほぼ100%「アルゴリズム」と呼ばれるコンピュータを駆使したシステム運用のために、超高速の売買が可能になります。
米国ではCTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザーズ)とも呼ばれています。英国ではデリバティブ・ファンド・マネージャーと呼ばれています。
彼らは金融庁にも登録され、ヘッジファンドの中では唯一透明性の高いトレーダーです。
まとめ
ヘッジファンドの投資戦略は、株価指数などより相対的に良い結果(マイナスでも株式指数より良い成績)を求めるのではなく、株価が下がろうが、天変地異が起ころうが、いつでも絶対的な利益を追求する運用スタイルであるということです。
こうしたヘッジファンドの姿勢が、富裕層の支持を得て、ここまで発達してきたのだと思います。
また、トレーダーの夢は最終的にはヘッジファンドになることかもしれません。
ハードルは低くありませんし、これまで通用してきた手法が突如破綻することもありうるのがマーケットの怖さです。
今でも毎月何十ものヘッジファンドが新しく設立されているようです。
著者プロフィール

FX会社主催のセミナー講師としても活躍する。
著書に『簡単サインで「安全地帯」を狙うFXデイトレード』
ロンドンfxの松崎美子さんと一緒にYouTube「fxの流儀」を配信中
<FXの流儀youtubeチャンネル> https://www.youtube.com/channel/UC30w5H2MGSs6wP1YFjPeXBg
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