原油需給はバランスからタイト化!?生産量は減少見込みか?
原油価格の急落は中東産油国やロシア経済、それに米国にも大きなダメージをもたらしました。
サウジアラビアでは、原油価格が下がったことで、2週間ほど前、7月から消費税にあたる付加価値税(Value Addrd Tax)を現行の5%から15%へと3倍へと引き上げるとの報道がありました。
これに加え、現在国民へ出している給付金(ベーシックインカム)の削減なども実施する予定だとのこと。
原油価格の下落と新型コロナウイルスの感染拡大に伴う財政危機に対応するための措置ということです。
今年3月6日のOPEC(石油輸出機構)を代表するサウジアラビアと非OPEC産油国を代表するロシアが減産幅をめぐって仲たがいとなりましたが、当時は生産コストの極めて安いサウジアラビアがシェア取り合戦で原油の大増産、価格下落によって米国シェール企業をつぶす戦略との分析がなされていましたが、サウジアラビアの内実は厳しかったようです。
ロシアは、3月6日の時点では、「(英国/ノルウェーの)ブレント原油で42ドル以上ならペイする」というプーチン大統領の強気の判断がありました。
しかし、翌週から原油価格が急落して、WTIより高いブレント原油も42ドルを切ってきて、4月には10ドル台まで下がってしまいました。
それをみて、プーチン大統領はサウジアラビアとの話し合いに積極的になっていました。
その時に仲介役を買って出たのがトランプ米大統領でした。
トランプ大統領は、僅か数か月前まではガソリン価格が高過ぎるとして、OPECやロシアの生産調整に対する消極姿勢を批判していました。
このため、当初は原油価格の急落を静観する姿勢を見せていましたが、国内シェール産業で経営破たんの動きが広がり始めると、一転してロシアに対して経済制裁カード、サウジアラビアに対しては軍事協力の縮小カードもちらつかせ、かなり強引に政策対応を迫っていました。
その原油価格ですが、ベンチマークである米国のWTI原油(ウエスト・テキサス・インターミーディエイト)は1か月前にマイナス価格を付けた期近物(当時は5月渡し、現在は7月渡し)がバレル当たり33.72ドルまで上昇してきています。
あれほど供給過多になっていた原油情勢はどうなっているのでしょうか?
直近の報道によると、ロシアは、原油市場の需給が6月か7月に均衡すると予想しているようです。
5月26日のブルンバーグによると、次のように報じています。
ロシアのノバク・エネルギー相は25日の声明で、世界の供給がこれまでに日量1400万-1500万バレル減少したと指摘した。
ロシア通信(RIA)がこれに先立ち、ノバク氏のスピーチについて知る関係者1人を匿名で引用して報じたところによれば、 カナダやノルウェー、米国などOPECプラス以外の主要産油国は日量350万-400万バレルの減産に貢献した。
OPECプラスは日量970万バレルの歴史的減産で4月に合意しましたが、ロシアも日量200万バレル減産し、OPECプラスの合意で約束した生産水準に達した模様です。
4月に決めたOPECプラスの970万バレルの減産幅に上記の日量350万-400万バレルを足すと、1,400万バレルにもなります。
今から1か月半ほど前、4月9日に行われたOPECプラスの総会の時にOPECのバルキンド事務総長が、「4~6月期は日量1200万バレル近い減産が必要になるとの試算を紹介したようです。
このペース(=日量970万バレルのペース)で減産を進めたとしても、「現在の前例のない需給不均衡を踏まえると、2020年7~9月期には日量1470万バレルという大量の余剰原油が発生する可能性がある」としていました。
一日当たり1470万バレルというのは世界の一日当たりの需要量の14~15%に当たる量ですが、この数字がたった1か月半で到達してしまったことになります!
1カ月前の欧米のロックダウン状況から考えると、かなり長期間の原油安は覚悟せねばならないと産油国は覚悟していたと思われますが、こんなにも速くこの需給がバランスするとはだれが予想していたでしょうか?
5月26日のブルンバーグの記事によると、
原油相場の急回復はシェール業界の最大の弱みを浮き彫りにしている。
生産量の急速な減少だ。
シェール油井は初期段階以降は生産量が急速に細るため、シェール業者は生産量を維持するために常に新たな油井を掘削しなければならない。
現在、シェール業者はそれができていない。
新型コロナウイルスによる世界的な需要急減を乗り越えるべくエネルギー会社が支出を大幅に削減する中にあって、米国の掘削活動は史上最低水準に落ち込んでいる。
シャンパンの瓶を振ってから栓を抜くと中身が噴き出すように、シェール油井も生産の初期段階は原油が噴出する。
しかし、その勢いが長くは続かないため、生産減を相殺するためにシェール業者はこれまで掘削を続けていた。
しかし、このところは記録的なペースで掘削リグを閉鎖している。
結果的にシェールオイル産業を抱えている米国が最も衝撃を受けた国かもしれません。
シェールオイルは原油の油井と違って、閉めてもすぐに復活できるとシェールオイルに詳しい友人から筆者は説明を受けていましたが、現実は小説より奇なりです。
5月24日のヤフーニュースによると、
米エネルギーサービス会社ベーカー・ヒューズが毎週金曜日に発表している石油リグ稼働数は、3月13日の683基をピークに、直近の5月22日時点では237基まで、10週連続で減少を続けている。
過去10週で446基(65.3%)の減少であり、新型コロナウイルスの影響で石油リグは一気に3分の2が稼働を停止した計算になる。
「2014年に原油価格が急落した当時は、原油価格の急落とリグ稼働数の減少との間に、概ね3か月程度のタイムラグが認められていた。しかし、今回は主要石油会社が瞬時に石油リグの稼働を抑制する動きを見せており、新型コロナウイルスの需要ショック、そして史上初のマイナス原油価格に対する危機感の強さが窺える状況になっている。」と解説しています。
さらに、「石油メジャー各社は、今年の設備投資計画を概ね3割程度縮小する見通しだが、経営体力の乏しい中小の採掘・生産会社の場合だと5割程度縮小するとの見通しもある。足元では、NY原油先物価格は30ドル台を回復する値動きになっているが、石油リグ稼働数は過去6週連続で前週比1割以上の減少が続いており、未だ底が見えてこない状況にある。」
米国のリアルな原油価格は今月に入り75%余り上昇しましたが、シェール業者による供給の急回復は見込めそうにない!というのがどうやらシェール業界の現実のようです。
ということで、まだまだ生産量は下がりそうです。
原油価格はもうしばらく上がりそうです。
結果論ですが、サウジアラビアのシェール企業つぶしによるシェア取り戦略は、次回は成功しそうに見えます。
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